研究課題/領域番号 |
22K12574
|
研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
石川 真作 東北学院大学, 地域総合学部, 教授 (20298748)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 文化人類学 / 移民 / トランスナショナリズム / ネットワーク / フィールドワーク |
研究実績の概要 |
1960年代から始まったイスラーム世界からヨーロッパへの移民について、第1世代の多くがリタイアし第2、第3世代への世代的移行が見られる状況下で、一部が出身地で多くの時間を過ごす傾向が見られる第1世代から第2世代以降への諸資源の世代的継承とトランスナショナリズムを現地調査によって明らかにしようとするのが本研究の目的である。 本研究の開始年度に当たる2022年度は、研究代表者が以前から進めてきた、ドイツ在住のトルコ系移民に対するフィールドワークについて、これまでほとんどドイツで行ってきた調査をトルコに拡大する試みを行った。その理由は、1990年代から続けてきたフィールドワークの成果をまとめた『ドイツ在住トルコ系移民の文化と地域社会』(2012)の刊行から10年を経る中で、本書に登場するインフォーマントの多くが、毎年一定期間をトルコで過ごしたり、人によっては生活拠点を移そうとしている様子がみられたためである。 本年度は、試みとしてアンタルヤおよびマルマリスの2か所で、こうしたインフォーマント家族への接触を行った。一方は、家族がそれぞれの理由に応じてドイツとトルコを行き来する生活を送っており、一方は、第1世代が第2世代にドイツでの生業活動を譲渡したうえでほぼ完全にトルコに生活拠点を移していた。また、一方は第1世代の出身地に拠点を構えているのに対して、一方は出身地とは異なる地方に新たに生活拠点を築いていた。また、他のインフォーマントと連絡を取る中で、トルコから親世代を呼び寄せ完全に出身地との関係を断った事例もあることがわかり、その動向は非常に多様であることがわかってきた。今後はこうした選択に至る要因を探っていきたいと考えている。 また、別途日本から帰還した移民の調査にも着手した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である本年度は、現地調査への着手を目標としており、その目標は達成した。研究計画時に調査対象として想定したインフォーマント家族のうち2家族を対象とした調査を行うことができ、次年度以降の調査の目途も立てることができたため、研究計画に即した研究遂行ができていると考える。また、計画時に想定していなかった要素を発見することもできたため、研究の広がりも期待できる。さらに、予定していなかった日本からの帰還移民と接触することができ、比較研究の可能性も視野に入って来た。 一方で、調査時期との関係でトルコでの接触が年度内にできなかったインフォーマントも存在する。また、2023年2月にトルコ東南部で発生した大地震によりトルコの一部地域での調査が難しい状況となったことも不安要素として浮上した。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き、ドイツ在住トルコ系移民の出身地等における動向について、現地調査を行う。 ドイツ在住トルコ系移民は、トルコにおいて気候が良くなる夏のバカンス時期を中心にトルコの出身地ないし別荘等に滞在する傾向がある。本年度は同時期の調査に間に合わなかったため、2023年度はこの時期における調査に着手する。本年度接触できなかったインフォーマントを含み継続して接触のあるインフォーマントとはすでに6月から8月にかけてトルコ滞在時に現地で接触するようアポイントを取り準備を進めている。 一方、本年度から新たに開始した日本から帰国したトルコ人移民労働者を対象とした調査も継続する。トルコで接触できたインフォーマントの関係者と日本で接触しトランスナショナルな関係性や活動の状況について調査を進め、ドイツのインフォーマント対象の調査との比較研究の可能性を探っていきたいと考えている。 また、ドイツのインフォーマントにはトルコ東部地域にルーツを持つ家族もあるため、東部地域の親族との関係について調査を行いたいと考えているが、現状では地震の影響で調査の可否は不透明である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度後半から学内助成を得て在外研究のためトルコに滞在することとなり、日本からの往復旅費が不要となったため旅費の使用額が大幅に圧縮された。繰り越し分は在外研究の終了する2023年8月までの滞在中にトルコおよびドイツの各地で行う現地調査の旅費として使用する。また、2023年度後半にも再度の現地調査を行う予定である。
|