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2023 年度 実施状況報告書

欧州の多元社会における地方分権化の過程と影響に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 22K12577
研究機関上智大学

研究代表者

中内 政貴  上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (10533680)

研究分担者 安富 淳  叡啓大学, ソーシャルシステムデザイン学部, 准教授 (50704673)
内田 州  早稲田大学, 地域・地域間研究機構, 次席研究員 (90852541)
田中 聡  立命館大学, 国際関係学部, 嘱託講師 (00965741)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード地方分権化 / 欧州連合(EU) / 紛争経験国 / 自治
研究実績の概要

2023年度も、本研究プロジェクトの第一の焦点である欧州連合(EU)による地方分権化政策についての調査を継続した。2000年代にEUが旧共産主義諸国を加盟国に迎えた際の事例を研究する中で、EUは民主主義にとっての分権化の重要性を強調する一方で、基本的にはそれを行政効率の改善といった「日常の政治」の中に位置付けており、中・東欧諸国の加盟プロセスにおいても、例えば人権保護や法の支配の分野などのようにEU基準の達成を求める強い圧力をかけたわけではないことが明らかになった。
上記と並行して、共同研究者による現地調査もふまえつつ、紛争経験国であるボスニア・ヘルツェゴヴィナ(以下、ボスニア)およびジョージアの事例についての研究を行った。両国ともに将来のEU加盟を目指しており、特にボスニアは2023年末に加盟交渉プロセスの開始が決定され、いよいよ加盟の最終段階にさしかかっている。ボスニアでは、停戦時に合意された民族間の権力分有を徹底する目的で地方分権化が継続して取り組まれているが、他方で、民族間の対立による政治の停滞を乗り越える目的で、中央政府に権限を集中させる必要性も指摘されている。本プロジェクトで調査を行う中で、EUが分権化の言葉を用いながらも、実質的に中央集権化を進めている現状が明らかとなり、このことは、2024年3月に発行された学術雑誌への投稿論文で発表した。ジョージアについては、加盟候補国の地位も認められない段階ではあるが、最大のドナーであるEUの影響力は強く、政府は地方分権化に取り組んでいる。特にトルコ系住民が多いアジャラ地方への自治の付与が欧米から賞賛されているが、他方で、ジョージア政府は同地方の分離の動きを警戒しており、同地方を避ける形で分権化の議論を行っていることが明らかとなった。この点についても、上記の学術雑誌への投稿論文で発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2023年度は文献調査に加えて、分担研究者によるEU機関への聞き取り調査やボスニアでの現地調査を実施することができた。その成果は、研究代表者が所属する大学院の紀要(査読:有)に論文として発表することができた。

今後の研究の推進方策

2024年度は、これまでの研究成果に基づき国内の学会においてパネル発表を行うことが決定している。引き続き文献調査・現地調査を実施しつつ、海外の学会での研究発表を行うことを計画している。大きな課題としては、本研究プロジェクトで実施している事例調査から、いかに他の事例にも適用可能な一般的な理論的な示唆を引き出すことがあり、プロジェクト最終年度である2024年度は、この点に中心的に取り組む予定である。

次年度使用額が生じた理由

2023年度は、分担研究者の現地調査において、同年度のみ使用可能な別の予算措置が得られ、同予算の使用目的が本研究プロジェクトの調査目的と合致するものであったことから、同予算を先に使用することとした。また、研究代表者においても、現地調査を予定していた北マケドニアにおいて、EU加盟プロセスの停滞が生じ、早期選挙の動きに発展するなど、調査を先延ばしにしたほうがより研究成果が得られると判断したことも、次年度使用額の発生につながった。本プロジェクト最終年度である2024年度は、研究成果を取りまとめるべく、現地調査を含めて全ての予算を使用する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2024

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] EU加盟プロセスを通じた地方分権化: ボスニアおよびジョージアの事例を中心に2024

    • 著者名/発表者名
      中内政貴、安富淳、内田州、田中聡
    • 雑誌名

      コスモポリス

      巻: 第18号 ページ: 29-38

    • 査読あり / オープンアクセス

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公開日: 2024-12-25  

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