研究課題/領域番号 |
22K12587
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
堀田 祐三子 和歌山大学, 観光学部, 教授 (40346250)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 持続可能性 / 余暇・観光 |
研究実績の概要 |
本研究は、資本主義経済の構造変化に伴う人々の余暇や観光に対する需要の変化に着目し、2010年代観光ブーム期の観光実態と政策との関係を検証するところにある。初年度は資本主義経済構造の変化を把握するため、資本主義経済論および企業経営に関する主要な議論と脱成長論をはじめとする公正性・倫理性等に関連する国内外の議論をレビューし、観光との関連を考察した。 情報技術の進歩とともに、環境破壊をはじめ人権侵害や貧困といった世界中の諸課題をよりリアルな現実として目の当たりにする機会が増えた。個人レベルではリスクや危機、社会の不安定性・不確実性への対応として、さらにはそうした諸課題を生み出す現行システムを変革する力の土台として、連帯や利他、倫理性等が強調される。観光の領域では、倫理や公正性といった規範性は「持続可能性」やサスティナブル・ツーリズムとして提唱されるが、個別の取り組みの全体への波及や、現実の観光(観光開発)との乖離に注意する必要がある。 また、日本のサービス労働の生産性の低さが問題視される一方で、不規則・長時間労働や低賃金の問題に加え、働き方の多様化に伴い働く人の権利侵害がたびたび生じていることや、グローバル化する労働市場と日本の雇用システムの慣行に齟齬が生じていることが新しい課題として指摘されている。観光は労働集約型の産業であり、とくに女性や外国人労働者が多く従事している。多様な働き手による多様な働き方が可能な時代に、産業界が働くことに対する価値観の変化をどのように捉えているのか、さらにはそのことが働かせ方にどの程度反映され、労働者にとっての現実の労働と余暇(観光)をどの程度変化させているかを解明することが次の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資本主義経済の構造変化とそれに伴う労働の変化についてのとりまとめが当面の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
労働の変化の把捉と、余暇との関係を検証する。日常生活圏での労働疎外と余暇との関係を念頭に、多様な働き方と余暇・観光の実態を把捉する。 併せて、インバウンドブーム期における国内観光の実践を検証するとともに、コロナ禍を経た観光の実践の変化を観察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会がオンライン参加となったことと、統計サービス利用が実現しなかったため。学会への参加費用等に使用する予定。
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