本研究は、サービス経済化や金融化といった資本主義経済の構造変化に伴う余暇・観光の変化を明らかにし、一連の観光立国政策や地方創生関連の諸施策と照合させて、2010年代の日本における観光ブームを批判的に検証することを企図している。具体的には、人々の余暇や観光に対する需要の変化に着目し、2010年代観光ブーム期の観光実態と政策との関係を検証することを課題としている。 今年度は、労働と余暇の関係を把捉することの一部として、観光関連産業に従事する労働者の余暇の実態にフォーカスした調査を大学院生との共同研究として実施した。 国際経済労働研究所の協力を得て提供をうけた三次産業に分類される業種の労働者へのアンケート調査結果と、大学院生によるインタビュー調査結果から、労働条件や労働意欲の傾向把握と、余暇時間の対する意識を分析した。 アンケート調査結果においては、いわゆる「現業」に従事する層において休暇や労働時間に対する満足度が低い傾向がみられた。他方インタビュー調査では、対象者の業種が「企画・管理」「販売・サービス」に偏りが生じ、余暇の階層性を分析することができていないが、観光関連産業に従事するインタビュー調査対象者(21人)のうち約6割が仕事に好意的な意識をもっており、休暇についても約3割がとりやすいとの認識を有していた。また、約4割が余暇活動に対して積極的な姿勢および意識を示した。
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