研究課題/領域番号 |
22K12591
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研究機関 | 奈良県立大学 |
研究代表者 |
薬師寺 浩之 奈良県立大学, 地域創造学部, 准教授 (70647396)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ネットノグラフィー / ユーザー生成コンテンツ / 観光者行動 / 観光経験 / 観光研究 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、ロバート・V. コジネッツ(Robert V. Kozinets)が生み出したネットノグラフィー調査を用いて、ユーザー生成コンテンツに表現される観光者の旅行行動や経験を多角的に考察し、最終的には観光研究におけるネットノグラフィー調査の手法の発展や普及を目指すものである。この調査手法は、インターネット上の文化や行動を質的に調査するものであり、マーケティング研究領域では活発に用いられている。 研究初年度の2022年度は、観光者のソーシャルメディアの利用に関する理解と、ネットノグラフィー調査の手法、同調査を活用した観光研究関係の先行研究、さらに同調査に関わる研究倫理などを理解した。研究者は2021年に論文「観光研究におけるネットノグラフィー調査の可能性」(『立命館大学人文科学研究所紀要No.128』(2022年1月刊行))を執筆し、ネットノグラフィー調査の基本的手順や、英語圏におけるネットノグラフィーを用いた観光研究の動向などに関する基本的知識を既にまとめている。しかし、ネットノグラフィー調査は、その調査手法が活発に用いられている欧米圏のマーケティング研究領域においても発展途上であることから、最新の研究事例や研究動向などを十分に理解することが観光研究におけるネットノグラフィー調査の発展に資するためにも極めて重要であることは明らかである。このような理由から、研究初年度は先行研究の理解に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究初年度の2022年度は、研究計画では以下の二つを実施する予定であった。 1.本研究の中核となる観光者のソーシャルメディアの利用に関する理解と、ネットノグラフィー調査の手法、同調査を活用した観光研究関係の先行研究、さらに同調査に関わる研究倫理などを理解し、3本の事例研究に向けた準備を行う。 2.旅行コミュニティサイトにおける旅行愛好家の語りに反映された、新型コロナウイルス感染症蔓延が引き起こした「国外旅行ができない」経験に関して、ネットノグラフィー調査を用いて行う。(本研究における3つのネットノグラフィー調査を用いた事例研究のうち、1つ目の研究) 上記1は、2022年度に実施することができた。しかし【研究実績の概要】でも述べた通り、ネットノグラフィー調査は現在でも発展途上の調査手法であることから、今後も最新の研究事例や動向を追跡する。 上記2は、2022年度に着手することができなかった。【今後の研究の推進方策】で詳述する通り、2022年中盤以降は世界的な入国制限緩和措置に伴い、新型コロナウイルス感染症蔓延が引き起こした「国外旅行ができない」状況ではなくなった。そこで一つ目の事例研究はテーマを変えて実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、本研究で実施予定であるネットノグラフィー調査を用いた3つの事例研究の内、2つの研究に着手する予定である。 【現在までの進捗状況】でも述べた通り、予定していた一つ目の事例研究である、新型コロナウイルス感染症蔓延が引き起こした「国外旅行ができない」経験に関するネットノグラフィー調査を用いた研究は、昨今の世界的な国際観光の再開と再興に伴い、研究テーマの変更が必要である。ポストコロナの国外観光経験に関する考察にテーマを変更する。研究者は、2020年にコロナ禍の観光の状況とポストコロナの観光の変化と変革に関する論文を執筆し、その中でコロナ禍の観光者が被っている旅行制限に関する考察を行っている(薬師寺浩之「新型コロナウイルス感染症がもたらした危機からの観光の回復と危機を契機とした変化・変革をめぐる論点の整理」(『立命館大学人文科学研究所紀要』125号,2021年1月,151 - 184頁))。この過去の研究で得られた知見を踏まえつつ研究を実施する。 二つ目の事例研究は、旅行コミュニティサイトにおける観光者の語りに反映された、非倫理的な旅行行動や経験の本質に関するネットノグラフィー調査を用いた研究である。研究者は、これまで開発途上国を訪問する先進国からの観光者を事例として、観光者の倫理的な観光行動について多角的に考察を行ってきた。この研究の中で、一部の観光者が行う非倫理的行為や違法行為について先行研究のレビューを中心に行ってきた。このレビューで得られた知見を踏まえてネットノグラフィー調査を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
観光者行動や経験、オンライン調査に関する洋書を購入する予定であったが、一部新刊図書の発売延期により、予定通り書籍を購入することができなかった。これが次年度使用額が生じた理由である。2023年度内に購入予定の本全てが刊行される予定であるため、全額使用する予定である。
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