研究課題/領域番号 |
22K12598
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
平松 裕子 中央大学, 経済学部, 特任教授 (30649629)
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研究分担者 |
原田 康也 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (80189711)
森下 美和 神戸学院大学, グローバル・コミュニケーション学部, 准教授 (90512286)
伊藤 篤 中央大学, 経済学部, 教授 (80500074)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 言語景観 / 翻訳 / 文化認知 / 日本文化 / 観光 / スマートフォン / インバウンド |
研究実績の概要 |
2023年度は研究者各自が自己の専門分野と言語景観の関連を深め調査研究を実施した。言語景観観察を進めながら、その結果をもとに、海外との比較、翻訳に着目した研究、日本文化の特徴の抽出などを行なった。海外在住中のメンバーともオンラインでの打ち合わせを行い、文化圏における言語景観の共通点や相違点を話し合い、2024年に向けて研究の方向性を固めることができた。 継続調査の中では日常生活の中で変化していく言語景観を捉え、動きの中でも残る文化的要素・調査区域の独自性の抽出が進んだ。店舗の掲示変化を観察し、移り行く価値の低いものとして見るのではなく、取捨のあり方、変化の傾向を具体的に調査した。 また、昨年につづき、認知科学会全国大会におけるオーガナイズドセッションが採択され、第40回全国大会オーガナイズドセッション (OS04)「 言語景観と名辞における多言語の交錯:認知環境と認知エージェントのインタラクション」を組んで、成果を発表するとともに、研究者間の意見交換を実施した。 国際学会における発表も行い、その中においては、翻訳に関して日本語と英語間のように著しく異なった扱いを必要する機会の少ないインド・ヨーロッパ語族間の研究者と意見交換を行い、幅広い分野を扱う言語景観の研究に関して意見交換を行った。その一方で、標準化の進む傾向が国内外で見られ、単語レベルを中心に言葉の伝播に関して、共通した認識を確認した。また、スマートフォンという媒体を通し、言語景観が実際に沿道に展開された言語だけでなく、自動翻訳やQRコード掲示により、その先に情報受容者の選択により広がっていく状況を確認した。 2024年度に向け、文化的要素の交差と理解に関して研究を深めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年同地域の景観調査を継続し、比較検討に入るという当初の予定通りに研究が進んだ。 検討要素を分類し、翻訳にみられる文化的特徴の抽出するという点に関しては、日本語の「見立て」と欧米の20世紀文学などの理論との比較などを行うことができた。 文化圏の相違による認識の差異に関しては、国際学会における意見交換などは行えたが、実際の観光客など言語景観の受容者に関する調査に関しては2024年に実施予定である。研究者のアプリへの実装に向け地元と打合せを開始し、研究成果はEDULEARNや認知科学会等において発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
日光における継続調査を実施し、3年間の調査研究成果をまとめ、文化圏に考慮したコンテンツ、日本文化を伝える入り口となる部分を作成し、これを「日光仮面ナビ」に実装することを目指す。その際には、日光と神戸における観光客調査やヒアリングを行い、調査結果を今日の観光に照らし合わせ、研究結果と地元の要望、今後の観光動向とのすり合わせを行う。 留意点としては情報を絞りこみがある。多くの情報を一方的に発信するのではなく、情報受容者の想像力を誘う部分を研究成果よりどう導くかという点があり、文化認知におけるこれまでの研究の実践を目指す。 最終年度にあたり、観光学における文化受容傾向の調査研究のみでなく、文化心理学、言語学、工学に関してそれぞれ研究者は国際学会における発表を行い、成果を国内外において発信する。
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究者の中の1名が今年度は国外在住であった。円安、航空運賃高騰で、日本国内の打ち合わせや日本国内学会(日本認知科学会)など当初予定と異なり帰国せずに、オンラインでの参加となり、その分の費用が新年度に持ち越しとなったことが主な理由である。ただし、日本の言語景観との国外の言語景観の比較資料は集まった。 新年度には、2023年度の海外における資料も踏まえて研究成果をまとめ、国際学会における発表を計画している。 計画自体は当初予定に準じたものではあるが、計画時より高い航空運賃、引き続きの円安で日本円では高騰している学会参加費なども、この次年度使用金の備えがあって可能になる。当初の予定通りに研究計画を進める。
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