研究課題/領域番号 |
22K12613
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
尾久土 正己 和歌山大学, 観光学部, 教授 (90362855)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アストロツーリズム / ダークスカイ |
研究実績の概要 |
近年、アストロツーリズム(AT)への注目が国内外で集まっている。他方で、当該観光形態に関する国際的な論調は、’Niche Tourism’や’Special Interest Tourism’の1つとして把捉されるきらいがあり、大衆化した日本国内の天文観光の現況とは齟齬が見られる。本研究は、わが国の天文観光が大衆化した要因を、「宇宙」ではなく「夜空」を重視する’Dark Sky Tourism’(DST)の内部化に求めた上で、天文観光の変容をデジタル技術の発展系譜に照合させるとともに、現況のDSTの内部化状況を理工学的な手法を用いて検証し、「日本人はなぜ今、星空を見上げるのか?」という問いに答えるものである。当初の計画では、1年目にわが国におけるATとDSTの関係性の整理を目的とした研究として、日本国内に存する’International Dark-Sky Places「星空保護区」’認定地である西表石垣国立公園、神津島村、井原市美星町と、認定を目指す大野市などでのフィールドワークを実施する、としていたが、コロナ禍のために十分なフィールドワークを行うことができないことから、以前から連携して研究を進めてきたみさと天文台と与論町で、2年目に予定していた夜空の等級を検出する器機Sky Quality Meter(SQM)を用いた実証実験と、さらに3年目に予定していた和歌山大学が所有するドームシアターを用いた実証実験を先行させた。前者の実験の予備的な分析では、先行研究では「アストロツーリストの真正性基準となる夜空の明るさは3等級にある」とされていたが、6等級という本物の暗い夜空に真正性基準を持っていることを示している。また、後者の実験の予備的な分析では、実際の夜空に近づけた映像よりも、虚構であるはずの鮮やかな天体写真に魅せられる人が多く、そこにはATの経験が影響していることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、わが国におけるATとDSTの関係性の整理を目的とした基礎的研究として、日本国内に存する「星空保護区」認定地である西表石垣国立公園、神津島村、井原市美星町と、認定を目指す大野市などでのフィールドワークを実施するとしていたが、どの地域においてもコロナ禍のために、催行されるツアーや集客が平常ではなく十分なデータが取得できないと判断し、以前から連携している施設や地域(和歌山県みさと天文台と鹿児島県与論町)での実験である2年目のSQMを使った実験と、室内実験である3年目に予定していたドームシアターを使った実験を前倒しで実施し、予備的な分析を行うことができた。これらの実験は今後も継続的に行うことでデータの質を高めて、本格的な分析を行うが、研究1年目で本研究で用いる2つの実験システムを構築し、予備的な結果を出せたことで、結果的に計画を上回るものになった。
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今後の研究の推進方策 |
前倒しで進めることができた2つの実験は、今後も継続的に行うことでデータの質を高めて、本格的な分析を行うが、並行して当初、1年目に予定していた「星空保護区」でのフィールドワークを国内だけでなく、東アジアに広げて行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた国内の星空保護区に認定された各地でのフィールドワークがコロナ禍のため十分に行うことができなかったために、これらのフィールドワークは2年目以降に実施する。
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