研究課題/領域番号 |
22K12625
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研究機関 | 相模女子大学 |
研究代表者 |
湧口 清隆 相模女子大学, 人間社会学部, 教授 (00386898)
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研究分担者 |
那須野 育大 大阪産業大学, 経営学部, 准教授 (30781546)
安達 晃史 大阪産業大学, 経営学部, 准教授 (30844534)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 観光列車 / レストラン列車 / 第3セクター / 大手民鉄 / 沿線自治体 / 沿線企業 / 住民団体 |
研究実績の概要 |
科研費獲得後初年度の研究として、2年度目以降に実施予定の乗客・沿線住民等に向けたアンケート実施の候補路線を探るべく、精力的に事業者へのインタビューを実施した。2022年9月にえちごトキめき鉄道、東武鉄道、12月に近畿日本鉄道、2023年2月に秋田内陸縦貫鉄道を訪問し、各社の観光列車戦略、レストラン列車戦略、運営方法、地域との連携方法等について2~3時間ずつ話をうかがった。また、インタビューに先行してあるいは合わせて「雪月花」「観光急行」「SL大樹」「あをによし」「ごっつお玉手箱列車」「イベント列車」に乗車した。さらに、えちごトキめき鉄道へのインタビュー前に、同社の鳥塚社長が異動前に社長を務めたいすみ鉄道や、接続する小湊鉄道、「レストランキハ」のケータリングを担当したイタリアン・レストラン「ペッシェ アズーロ」を訪問し、各者の取組みを見学した。 これらのインタビューから系列企業が絡む大手民鉄の場合と沿線自治体が大きな影響力を持つ第3セクター鉄道の場合でレストラン列車を含む観光列車の運営方法に大きな違いが見られるものの、鉄道事業者側が地域の魅力を引き出すために沿線企業等と連携を図るだけでなく、沿線地域に経済効果が帰着するような工夫をおこなっていることが確認できた。鉄道事業者の方が企画を進めることが多い中で、秋田内陸縦貫鉄道では住民団体側からの呼びかけで「ごっつお玉手箱列車」が始まり、それを機に鉄道事業者が「場」の提供という立場で沿線企業、団体の企画づくりに積極的に協力するという流れができあがったことがわかった。この違いが乗車料金の違いに大きく影響していることが推測される。 以上の成果を踏まえて、日本交通学会大会で報告し『交通学研究』誌に投稿、掲載されたほか、2023年度に掲載見込みの論文1本、国内学会発表1回の準備をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記したとおり、事業者へのヒアリングを順調に行い、それをもとに、2023年度に沿線自治体・企業・住民団体へインタビューを実施し、さらに鉄道事業者もまきこんで乗客、住民等へのアンケートを行う協力を得るべく準備を進めている。当初計画どおりの進捗である。また、研究報告についても国内学会に限られるものの、既に1回報告を行い、査読付き論文として学会誌に掲載できている。2023年度前半の成果発表に向けて研究を進展済みである。 これらの点を踏まえて、「おおむね順調」と判断している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度には、秋田内陸縦貫鉄道やオホーツク地域(「流氷物語号」「冬の湿原ものがたり号」等)、JR四国などを対象に、鉄道事業者に加え、沿線自治体、住民団体、企業等へのインタビューを進め、これら関係者全体からの協力が得られそうな路線を対象に、乗客及び沿線双方を対象として、観光列車・レストラン列車の経済効果やその認識、鉄道の存在価値等に関するアンケートを実施する計画である。アンケートは2024年度にも実施することを想定しており、そのための関係づくりも並行して進めていく。2024年度、25年には海外の観光列車の事例も現地調査し、観光列車・レストラン列車の運行を通じて、鉄道事業者と沿線地域との間で受益と負担がどのように分担され、非採算鉄道の価値認識につながっているのかを定性的かつ定量的に明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年2月に秋田内陸縦貫鉄道へヒアリングを実施したが、その際、冬季で天候が乱れる可能性が高かったことから、大阪から秋田空港、大館能代空港行きの飛行機が欠航した場合の代替経路利用時の増額分(数千円)を見込んでいた。その分が残額となり、次年度に実施するヒアリングを行う際の旅費として充当する。
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