研究課題/領域番号 |
22K12628
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研究機関 | 桃山学院大学 |
研究代表者 |
大野 哲也 桃山学院大学, 社会学部, 教授 (40598075)
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研究分担者 |
岩谷 洋史 姫路獨協大学, 人間社会学群, 講師 (00508872)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 冒険ツーリズム / エベレスト / 登頂ツアー / フォトエスノグラフィー / ネパール |
研究実績の概要 |
エベレスト登山という命懸けの行為が現在ツーリズム化しており、「登頂ツアー」が乱立している。この状況を鑑み、本研究ではそれがいかにして可能なのか、どのようにして死亡率を下げているのか、ということをモノ(登山道具、メディア、通信システム、医療システム、ロジスティック、人的ネットワークなど)という観点から考察することを目的にしている。この目的のために、本研究が特徴的なのは、写真というメディアを用いて、フォトエスノグラフィーという手法で迫っていくところにある。なおフォトエスノグラフィーは研究最終年度に出版する予定である。 1年目の2022年度は、コロナ禍ということもあり2022年夏季のネパールへの渡航が叶わなかったが、2023年2月下旬から3月上旬にかけて、研究代表者の大野と、研究分担者の岩谷洋史(姫路獨協大学)、研究協力者の今泉隆裕(桐蔭横浜大学)とともにネパールに渡り、大野の現地カウンターパートであるアムリット・バジュリャチャヤ(エスノフォトグラファー)の4名で、フォトエスノグラフィーのための写真撮影をカトマンズ周辺、とくに登山者の拠点となるタメル地区でおこなった。出版予定のフォトエスノグラフィーは「文化」「自然」「冒険」「ツーリズム」というキーワードを掲げており、カトマンズ盆地の世界遺産などの撮影もおこなった。 また、女性で3度エベレスト登頂を果たしたネパール人の方と、エベレスト登頂ツアーのシェルパとして活躍している男性にインタビューを申し込んだが日程的な都合が合わず実現しなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍ということもあり2022年度の夏季にネパールで調査することは叶わなかったが、2023年2月から3月にかけては渡航することができ、当初の計画以上にに調査と写真撮影をすることができた。 登頂ツアーを催行するカンパニーはアメリカ、ニュージーランド、日本、ネパールなど世界各国に存在している。本研究では日本とネパールのカンパニーに焦点化して調査をすすめるが、ネパールのカンパニーの予備的調査はすることができた。だが、日本のそれについてはすることができなかった。 またエベレスト登山のシーズンにあたる9月から10月にかけての通称ポストモンスーン期のネパール調査ができなかったことも「当初の計画以上に進展している」とならない理由として挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は春季に現地カウンターパートと大野で実際に標高5300メートルのエベレスト・ベース・キャンプ(EBC)にむかい現地調査をする予定である。カトマンズのトリブバン空港から標高2800メートルのルクラという町に飛ぶと、そこからEBCまで人がギリギリですれ違うことができる細く険しい登山道がついている。EBCまでは高度順応が必要なので10日ほどかかる。この道は登山者にとっては高度順応のトレーニング場として機能していて、登山シーズンの4月から5月にかけての通称プレモンスーンには、登山ガイドのシェルパや登山道具を運ぶポーターなど多くの人が行き来している。 なお、2023年のプレモンスーンにはネパール政府が450名にエベレスト登山の許可を出したと報じられたので、今春のエベレストは登頂ラッシュとなるはずである。 この時期に合わせてEBCに向かい、現地カウンターパートと大野の2名でネパールの登頂ツアーを催行するカンパニーの調査とエベレスト街道の調査をおこない、エベレスト登頂ツアーの実態と内実に迫りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年夏季にネパールでの現地調査をおこなう予定であったがコロナ禍によってそれが叶わなかった。そのために次年度使用額が生じた。 しかし生じた次年度使用額については、昨今、エベレスト登頂ツアーの盛況ぶりで現地の物価が高騰していると聞くエベレスト・ベース・キャンプ調査ですべてを使用する予定である。
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