研究課題/領域番号 |
22K12637
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
池田 弘乃 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (80637570)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アセクシュアル / 法理論 |
研究実績の概要 |
クィア理論の知見がジェンダーに関する法理論にどのような寄与をなすことができるのかを探求する本研究課題においては、現在の社会通念を徹底的に問い直す視点として「アセクシュアル」という言葉に着目し、現代社会において「多様な性」の社会的包摂が議論されるとき、そこになおも存在する見えにくい(あるいは不可視の)前提が何であるのかを明らかにするとともに、ロマンティックな関係への欲求とセクシュアルな欲求との関連性を考察することを通じて、現代社会において「ロマンティックな欲求」に関わる人間関係とはどのようなものでありうるのか、そこにどのような法理論上の問題が存在するのかを探ることが大きな目的である。 研究第1年目となる2022年度は、アセクシュアルという現象を精密に分析する作業に従事した。それを「LGBT等と並ぶ1つの性的指向と捉えてよいのか」、そもそも「1つの性的アイデンティティとして捉えてよいのか」それとも「人間のアイデンティティにおけるセクシュアリティの位置づけ自体に再考を迫るものなのか」といった問題を、関連文献を精査して整理した。また、ロマンティックな人間関係のあり方や友愛等と性愛による人間関係との異同を検討することで、アセクシュアルの理論的位置づけを明確化することを試みた。 具体的には関連する文献や論文を収集し、読解する作業が中心となった。また、研究会報告を通じて、今後の論考公刊に向けて問題状況を整理する機会をもつこともできた。さらに、計画最終年度に予定している著作としての研究成果の公開について、具体的な手順作りに着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画に予定していた作業を概ね遂行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
1年目の作業を前提に、今後は、既存の法制度が人間について暗黙の裡に前提としているものを洗い出す作業へと接続させていきたい。「アセクシュアル」をめぐって、どのような法制度上の課題が存在するのかを考察する。アセクシュアルであることが実際にどのような形で当事者の差別や不利益につながっているのかを可視化することを重視し、「課題は存在せず、当事者の私的な苦痛が問題になっているに過ぎない」という「解釈」が前提とするバイアスを剔抉することを試みたい。
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