研究課題/領域番号 |
22K12646
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研究機関 | 大阪信愛学院大学 |
研究代表者 |
廣森 直子 大阪信愛学院大学, 教育学部教育学科, 准教授 (40315536)
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研究分担者 |
渋谷 典子 愛知大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (20555510)
瀬山 紀子 埼玉大学, その他部局等, 准教授 (00599813)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 公務非正規 / 専門職 / 女性 / 持続可能性 / ジェンダー差別 |
研究実績の概要 |
本研究は、女性が多く働く公務非正規労働の専門職の実態を明らかにし、その持続可能性を検討することを目的としている。 本年度は、研究組織を立ち上げ調査計画を練ることに時間をかけた。本研究予算で行った調査による実績はまだ少ないが、研究代表者、研究分担者、研究協力者らがこれまで公務非正規問題にかかわってきた実績から多くの成果を公表している。 それらによれば、公務労働の非正規化によって、公共サービスとしての高度な専門性が求められつつ不安定・低処遇で働く専門職が増え、それらの多くは女性によって担われている実態がある。公務非正規労働の問題性は従来から指摘はされてきたものの、状況は改善せず、むしろ公共サービスの質の低下が懸念される状況になってきている。そうした状況の要因は明確ではないが、要因の一つにはそれらの職種の多くが女性によって担われてきた専門職であるという特徴が影響しているのではないかと考えられる。 本研究では、彼女たちの経験している非正規公務員というカテゴリーが生み出した差別とジェンダー差別の二重性を明らかにし、そのことが専門職としての仕事の持続可能性にどのような影響を及ぼしているのかを検討している。また、当事者の女性たちがたちあげた“公務非正規女性全国ネットワーク(通称:はむねっと)”と連携して調査研究を実施していくことで、情勢に応じた調査研究を行い、同時にその成果を社会にフィードバックし幅広い連帯を図っていくことをめざしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は研究組織(研究代表者:廣森直子(大阪信愛学院大学)、研究分担者:渋谷典子(愛知大学)、瀬山紀子(埼玉大学)、研究協力者:渡辺百合子(はむねっと)、小河洋子(神戸女子大学非常勤講師、男女共同参画センター情報アドバイザー))を組み、定期的なオンラインミーティングを10回、講師を招いてのオンライン研究会を3回開催した。定期的なミーティングでは、調査実施にむけての現状把握と情報交換、実務面も含めた議論を重ねた。研究会は、第1回(6/27)「会計年度任用職員制度への移行と課題」講師は中野麻美先生、第2回(9/7)「公務員の法的地位と非正規公務員」講師は早津裕貴先生、第3回(12/21)「非正規公務員と職務評価」講師は大槻奈巳先生、の3回を行い、公務非正規にかかわる問題意識を深めた。 公務非正規労働によって担われている専門職種を対象とした調査によって、職場の実態、個人のキャリア形成プロセス、女性ゆえの困難を分析し、専門職の特殊性や公務労働としての共通点を検討するため、次年度から実施する公務非正規専門職で働く女性へのインタビュー調査にむけて調査計画を立てた。研究代表者の所属先の研究倫理委員会への申請を行ない、倫理委員会の承認を経て、次年度より調査実施に入る。なお、2022年度末は、公務非正規の職場に会計年度任用職員制度が導入されて3年目「公募」の時期にあたり、これまで継続して働いてきた当事者が雇用継続の危機にさらされ不安定な状況にあるため、調査の実施は状況が落ち着いた次年度から開始することとした。
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今後の研究の推進方策 |
研究倫理審査を受け承認された研究調査計画に従い、公務非正規専門職で働く女性へのインタビュー調査を実施する。インタビュー対象は、公務非正規専門職で働く女性(専門職としてのキャリア3年以上)とし、職種として図書館司書、学校司書、相談員・カウンセラー、女性関連施設職員、社会教育施設職員を設定し、各職種5人程度を予定している。インタビュー調査の分析を進めつつ、その成果や職務評価を生かした職種別Webアンケート調査の計画を立て、より広範な実態把握につとめる。研究成果を公表し、問題解決に向けた幅広い連帯に資するよう社会へフィードバックする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は当初計画では予定していた予備調査を行わなかったため残額が生じた。2023年度の本格調査実施のなかで予算は使用見込みである。
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