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2023 年度 実施状況報告書

公務非正規女性が支える専門職の持続可能性についての実証的研究

研究課題

研究課題/領域番号 22K12646
研究機関大阪信愛学院大学

研究代表者

廣森 直子  大阪信愛学院大学, 教育学部教育学科, 准教授 (40315536)

研究分担者 渋谷 典子  愛知大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (20555510)
瀬山 紀子  埼玉大学, その他部局等, 准教授 (00599813)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード公務非正規 / 専門職 / 女性 / 持続可能性 / ジェンダー差別
研究実績の概要

本研究は、女性が多く働く公務非正規労働の専門職の実態を明らかにし、その持続可能性を検討することを目的としている。
2023年3月に研究代表者の所属先の研究倫理委員会の承認を得て、2023年4月より公務非正規専門職で働く女性へのインタビュー調査を開始した。インタビュー協力者は、公務非正規女性全国ネットワーク(通称:はむねっと)の協力を得て、2024年3月までに23人に実施した。研究代表者は、2023年7月までに行った13人へのインタビュー調査のデータから分析を行い、9月に学会発表を行い、2024年3月には、はむねっと発足3周年ハイブリッド集会において本研究を基調とした講演を行った。本研究の調査結果をもとに、研究分担者、研究協力者らがこれまで公務非正規問題にかかわってきた実績も含め、多くの成果を公表している。
本研究では、彼女たちの経験している非正規公務員というカテゴリーが生み出した差別とジェンダー差別の二重性を明らかにし、そのことが専門職としての仕事の持続可能性にどのような影響を及ぼしているのかを検討している。調査からは、低処遇が雇用区分として固定化し専門職としての裁量や責任を持ちづらい状況、有期雇用ゆえに常に雇用継続の不安を抱え専門性形成の土台が奪われていること、専門職が非正規雇用されているため職場での温度差が生じやすいこと(専門職であろうとする志向の強弱、あくまで非正規であるという意識など)、職場での尊厳の問題(メンバーシップのなさ、マイクロアグレッションなど)、職場の問題状況を訴えづらく声を出しづらいこと、などが明らかとなった。これらの分析からは、現状のままでは、非正規労働により支えられている公共サービスの持続可能性は危機的な状況であることが示唆される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

公務非正規専門職で働く女性へのインタビュー調査を5職種(図書館司書、学校司書、相談職、女性関連施設職員、社会教育職員)各5人をめざし、2024年3月末までに23人実施した。各職種で職場の状況も異なり、専門性の内容も異なっており、地域や自治体規模、専門職が複数配置されているかどうか等に応じて、様々な状況を聞き取ることができた。インタビューデータはテープ起こしをして逐語録を作成し(1人のみ記録対応)、分析対象とするためのデータの整理を行っている。
当初の研究計画では職種別Web調査も計画していたが、インタビュー調査での聞き取り内容が豊富であるため、そのデータ整理を行いつつ、必要に応じて追加調査を行うこととした。

今後の研究の推進方策

公務非正規専門職で働く女性へのインタビュー調査を5職種(図書館司書、学校司書、相談職、女性関連施設職員、社会教育職員)各5人、計25人への調査を2024年度6月までに終え、逐語録の作成とデータの整理、分析を行う予定である。
2024 年度日本女性学会大会において、パネル報告「公共サービスの持続可能性を考える~ジェンダー視点で捉える公務労働」を、本研究の調査分析内容に基づき企画している。成果報告とディスカッションにより、今後の研究推進、分析の視点を深めたい。

次年度使用額が生じた理由

公務非正規専門職で働く女性へのインタビュー調査は2023年度に25人の実施をめざして行ったが、依頼と調査実施の都合上2023年度中に終了しなかったものを2024年度の早い段階で実施する予定である。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (7件) (うちオープンアクセス 3件、 査読あり 1件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] 図書館職場における非正規女性の不自由と専門性の搾取の構造 -公務非正規女性全国ネットワークの調査から-2024

    • 著者名/発表者名
      廣森直子
    • 雑誌名

      大阪信愛学院大学紀要

      巻: 2 ページ: 54-65

    • DOI

      10.60250/0002000051

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 実践と研究をつなぐ「実践研究」から公共サービスを考える2024

    • 著者名/発表者名
      渋谷典子
    • 雑誌名

      「地方行革」がもたらしたものとこれからの自治体行政:東海自治体問題研究所50周年記念調査事業 第3巻

      巻: 3 ページ: 35-41

  • [雑誌論文] 地方において女性はどのように自立できるのか : 福祉専門職と研究職のキャリア選択の語りからの検討2023

    • 著者名/発表者名
      廣森直子
    • 雑誌名

      日本労働社会学会年報34(特集 人口減少時代における地方の若者と経済的自立)

      巻: 34 ページ: 38-64

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 女性の非正規公務員の「声」を集めて―公共サービスの持続可能性を考える2023

    • 著者名/発表者名
      渋谷典子
    • 雑誌名

      診療研究

      巻: 590 ページ: 25-31

  • [雑誌論文] 非正規が支える公共サービス : コロナ禍のなかではじめた公務非正規女性全国ネットワークの活動から2023

    • 著者名/発表者名
      瀬山紀子
    • 雑誌名

      東海社会学会年報 = The annual review of the Tokai Sociological Society

      巻: 15 ページ: 19-32

  • [雑誌論文] 非正規女性を支え手とする福祉現場の実像 : 公務非正規女性全国ネットワークの調査から2023

    • 著者名/発表者名
      瀬山紀子
    • 雑誌名

      福祉社会学研究 = Journal of welfare sociology

      巻: 20 ページ: 125-143

  • [雑誌論文] 「女性」の視点から「公共のあり方」を問う2023

    • 著者名/発表者名
      瀬山紀子
    • 雑誌名

      季刊現代の理論

      巻: 34 ページ: デジタル版

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 公務非正規専門職の不自由とジェンダー2024

    • 著者名/発表者名
      廣森直子
    • 学会等名
      はむねっと発足3周年ハイブリッド集会
  • [学会発表] 公務非正規で働く専門職女性の経験2023

    • 著者名/発表者名
      廣森直子
    • 学会等名
      日本教育社会学会 第75回大会
  • [学会発表] 公務非正規専門職の女性たちにとっての持続可能性 ―男女共同参画センター職員へのインタビュー調査から―2023

    • 著者名/発表者名
      小河洋子、廣森直子
    • 学会等名
      日本社会教育学会 第 70 回研究大会
  • [学会発表] 非正規公務員および公務の民間化におけるジェンダー課題―法的視点をとらえて2023

    • 著者名/発表者名
      渋谷典子
    • 学会等名
      ジェンダー法学会 第21回学術大会
  • [学会発表] 76%が非正規で,図書館は持続可能か?2023

    • 著者名/発表者名
      渡辺百合子
    • 学会等名
      第109回全国図書館大会 第14分科会

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公開日: 2024-12-25  

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