研究課題
チェレンコフ回折放射光の強度は、荷電粒子と媒質(誘電体)間の距離(インパクトパラメータ)に応じて、変化する性質を有すると考えられ、この放射特性を応用した、非破壊ビーム位置モニターの基盤技術の確立と、原理実証を目指して研究を行っている。これまでに実施した、誘電体にシリカエアロゲルや高密度ポリエチレン(HDPE)を用いた実験から、電子ビームが、中空誘電体の内筒を通過する際に放射するチェレンコフ回折放射光の強度は、インパクトパラメータによって変化することは確認できたが、理論値と大きな乖離が見られた。そのためこれらの特性をビーム位置モニターに応用するためには、理論と実験の両面からチェレンコフ回折放射光の特性を明らかにすることが必要不可欠である。チェレンコフ回折放射光は、その放射原理から、中空誘電体の内筒を通過する電子ビームの位置が変化しても、放射されるチェレンコフ回折放射光の方位角強度分布のみが変化すると考えられる。実験装置の制約から、測定する方位角を固定せざるを得なかったが、、チェレンコフ回折放射光強度のインパクトパラメータ依存性を測定したところ、強度分布のピーク位置はほとんど変化せず、放射強度のみが変化することを実験的に確認することができた。さらに詳細な調査を行うためには、中空誘電体を保持する金属製の部品などに起因する回折放射の影響を取り除くことが必要であり、これらの部品の設計変更を行うことした。他の実験と両立するために、チェレンコフ回折放射光の取り出し方向を変える必要があったため、その準備を進めた。
3: やや遅れている
チェレンコフ回折放射光の特性を明らかにするために、放射強度のインパクトパラメータ依存性を測定した。解析の結果、予測通り放射のピーク位置が、インパクトパラメータによらず、ほとんど変化しないことを確認することができた。本実験は、試験加速器t-ACTSのビーム診断部で行っている。他の実験と両立するために、チェレンコフ回折放射光の取り出し方向を変える必要があり、プロファイルモニターなどを改造しなければならない。現在その準備を行っている。
中空誘電体を保持する部品と、プロファイルモニターのヘッドを新規設計して、実験セットアップを再構築し、チェレンコフ回折放射光の放射強度のインパクトパラメーター依存性と分光測定を行う。
プロファイルモニターヘッドなどの部品の設計が遅れ、製作に至らなかったために次年度使用額が生じた。当初の予定通り、これらの部品の製作に用いる。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Proc. IPAC'22
巻: 1 ページ: pp. 320-323
10.18429/JACoW-IPAC2022-MOPOPT033
Proceedings of the 19th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan
巻: 1 ページ: pp. 761-763