研究課題/領域番号 |
22K12665
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
中新 信彦 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光量子科学研究所 光量子ビーム科学研究部, 主幹研究員 (70615509)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | レーザー加速 / バンチ長 / コヒーレント遷移放射 / 周波数干渉 |
研究実績の概要 |
レーザープラズマ加速はフェムト秒という短いバンチ長で10 kAを超える大電流の高エネルギー電子バンチが発生可能な技術で小型加速器をはじめ超高速診断等への応用が期待されている。電子のバンチ長は加速器として重要なパラメータであり、時間分解プローブとしての利用では時間分解能に直結する。 しかし、レーザー加速におけるフェムト秒のバンチ長を正確に評価する手法が確立されていない。本研究ではコヒーレントな放射、特に電子バンチが金属薄膜に入射した際にその境界面で発生するコヒーレント光遷移放射(COTR)のスペクトルと各周波数における位相分布を、超短パルスレーザーとの周波数干渉から取得する技術を開発し、フェムト秒オーダーの電子バンチ長の評価を行う。 これまでにエネルギー数100 MeVで単色性が1%を下回る高品質なレーザー加速電子ビームを発生し、ステンレス薄板に通して発生するCOTRとプローブの超短パルスレーザーを干渉させ、空間および周波数干渉縞を得ることに成功した。今年度はこの周波数干渉縞からプローブに対するCOTRの相対的な位相分布を評価し、あらかじめ計測していたプローブの絶対位相と合わせることで、COTRの絶対位相を求めた。その結果、750~840 nmの帯域で位相分布が一様であることが確認された。この位相分布からCOTRのパルスの時間波形を再構成したところ半値全幅で~16.4 fsのパルスになっており、周波数干渉縞が得られた帯域(プローブの帯域)よりもさらに広い帯域のCOTRが観測できたため、電子バンチの時間幅はそれよりもさらに短いと示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画当初に予定していたレーザー加速電子ビームの安定化、電子ビームを使った近赤外から可視域の広帯域のCOTRの発生、さらには超短パルスレーザーと電子ビームで発生したCOTRの異種の光パルスの周波数干渉の計測に成功し、得られた結果から当初目的であるCOTRの絶対位相を評価し、そのパルス幅を評価した。その結果から電子バンチ長の上限値を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
COTRとレーザーの位相のフラつきから電子バンチのレーザーに対するタイミングジッターの評価を行う。 より高分解能でのバンチ長の評価を行うために、現在使用している~30 fsのレーザーパルスより広い帯域でのCOTR干渉計測を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度は広帯域でのCOTR干渉計測に向けた数サイクルレーザーパルスの生成に必要なガス封入型中空ファイバー(ファイバー、ガス封入容器、ガス調整バルブ等)を購入する予定であったが、所属機関内に既存のもので使用できるものがあったため当該年度での購入を取りやめた。数サイクルレーザーパルスよりもさらに短いパルスを評価するには、さらに広い帯域でのCOTR干渉計測を実現する必要がある。その手段として2倍波を利用したものを着想した。この実験を行うために2倍波生成用の非線形結晶の購入を計画している。
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