研究課題
本研究課題では、膜タンパク質の動的な変化を解析する手法として、界面解析法の一つ中性子反射率法の適応を目指している。中性子反射率法では、Si-Wafer上に生体膜を再構築し、その上部を液体で見たし、固体ー液体界面として解析することで詳細な解析を行う。初年度は、大腸菌のベータバレル型膜タンパク質輸送装置BAM複合体の再構築を目指した。BAM複合体は、中心因子であるBamAにBamB-Eの4つのタンパク質が会合して複合体を形成する。これまで、BamAに対して、BamCを除くサブユニットの会合には成功していたが、BamCのみはBamAに安定的に結合させることができていなかった。今回、BamCが安定して結合できない問題に対して、BamCを生体膜を再構築する際の脂質を加える前にWaferに固定することで、BAM複合体に安定的に取り込まれることがわかった。その後、BAM複合体の他のサブユニットであるBanmA, B, D, Eを加えることでBamCの構造変化を捉えることができた。構造変化がin vivoでも起こりうる生理的な現象であることを部位特異的光架橋法で確認した。また、その中で、構造解析に必要なプロセスである界面活性剤による可溶化が複合体のダイナミクスに大きな影響を与えており、状態が限定されてしまっていた原因であることを突き止めた。そのほか、再構築する膜の標的として、ヘリコバクターピロリ、インフルエンザ菌のタンパク質の精製を行なった。
2: おおむね順調に進展している
生体膜の再構築については、基準としていたBAM複合体については完全な複合体の再構築に成功している。また中性子反射率法の一般化を睨んだ、他の生物種の膜タンパク質の精製についても成功しており、研究は滞りなく進行できている。
大腸菌のBAM複合体については、基質に存在するシグナル部分の結合状態を再構築し、構造解析等によってダイナミックに構造変化すると想定されている構造変化を中性子反射率法によって解析する。一般化に向けた、他の生物種についてはインフルエンザ菌のadhesin、Hiaを中心とした再構築を目指す。
研究試薬購入において割引があったため端数が繰り越された。
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The EMBO Journal
巻: 42 ページ: e110454
10.15252/embj.2021110454