研究課題/領域番号 |
22K12672
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
塩田 拓也 宮崎大学, フロンティア科学総合研究センター, 准教授 (20819304)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 中性子反射率法 / 膜タンパク質 / 分子形態 / BAM複合体 / 大腸菌 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、膜タンパク質の動的な変化を解析する手法として、界面解析法の一つ中性子反射率法の適応を目指している。モデルとするタンパク質複合体として、大腸菌の外膜タンパク質輸送装置Beta-barrel Assembly Machinery(BAM)複合体を用いている。BAM複合体のサブユニットの1つBamCのトポロジー理解のために再構築条件を決定し、BamCのBAM複合体に対する結合部位を決定した。この結合部位は、細胞実験で明らかにされたものと同じであると同時に、X線結晶構造や、クライオ電子顕微鏡解析といった従来の構造解析とは異なるものであり、中性子反射率法の有用性を示すことができた。さらに、BAM複合体に不安定に結合するタンパク質の結合部位を中性子反射率法で解析した。その結果、タンパク質の結合部位は従来のX線結晶構造や、クライオ電子顕微鏡による解析で明らかにされた結合部位とは大きく異なり、別のタンパク質相互作用部位を見出すことに成功した。この結合部位は、BAM複合体がタンパク質を認識する受容体部位として機能していた。この受容体は大腸菌が所属するグラム陰性菌に普遍的に存在するシグナルを認識し、タンパク質の立体構造形成と膜組込みにとって重要な役割を担っていることを突き止めた。以上の成果は、eLife誌に発表した。 このように、中性子反射率法の生体膜解析に有効に用いることができる事象として、その例となる解析結果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
BAM複合体がタンパク質を輸送する際に、そのタンパク質と相互作用するが、この相互作用については1つの状態しか明らかになっていなかった。今回、中性子反射率法でしか解析できないほどに不安定な状態のBAM複合体の分子形態解析によって、新しいタンパク質結合状態の分子形態を決定することができた。この結合部位は、これまで機能が不明であったBamDと呼ばれるサブユニットであり、この相互作用はタンパク質輸送にとって重要であることを突き止めた。以上の成果は、eLife誌に発表した。
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今後の研究の推進方策 |
BamCについて中性子反射率法によるトポロジー解析が完了している。今後は、中性子反射率法がトポロジー解析に用いれることを示すために、この中性子反射率法で明らかにできているトポロジーが生理学的に意味のあるものであることを明確に示す必要がある。そのために、中性子反射率法で明らかにできたトポロジーを取れない変異体を単離し、その影響を詳細に解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
BamCの中性子反射率法による測定結果の解析が複雑であり、当初予定より時間がかかったため、その後行う予定であった生理学的解析が遅れ、その部分の実験に必要な予算が次年度使用額として生じた。
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