研究実績の概要 |
前年度に引き続き、19世紀から20世紀にかけての技術転換と書体デザインの変化の経緯をたどった。①19世紀初頭の英国における広告活字の登場と発達、および木活字も含めた新技術導入による設計手法の変化に着目しながらサンセリフ体の発達過程を整理し、用途に応じた形状の特徴を考察した。産業革命後に登場したファットフェイス体やスラブセリフ体などの広告活字とともに発達したサンセリフ体が唯一簡素化の方向をたどり、ゆるやかにサイズやファミリーの幅を拡げ、世紀の後半に本文用書体としての機能を備えるまでの経過を書体見本帳をもとに確認した。(コロンビア大学図書館での調査を実施)②第二次世界大戦前に開発された写植(写真植字)が戦後の印刷業界に普及し、20世紀米国におけるグラフィックデザインのあり方を一変させたプロセスを確認するため、活字から写植への技術転換の過程をたどりつつ、デザイナーが取り組んだ新たな書体設計の方針を明らかにした。米国における写植開発の先駆者エドワード・ロンドターラー(Edward Rondthaler, 1905-2009)が感光体に文字を定着させる新技術の実態を探るとともに、書体デザインの商品化を開始する経緯をたどった。その上で、光学的な複製手段が自由な文字表現を可能にし、トム・カーネイズ(Tom Carnase, 1939-)やトニー・ディスピーニャ(Tony Di Spigna, 1943-)らレタリングアーティストの参加によってハーブ・ルバリン(Herb Lubalin, 1918-81)がサンセリフ体の設計に新たな方向を拓いたことを確認した。とりわけルバリンが手がけたAvant Garde Gothic、Lubalin Graph、Serif Gothicという3書体に注目し、設計段階における相互のデザインの関係を明らかにした。(ロチェスター工科大学図書館での調査を実施)
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