研究課題/領域番号 |
22K12686
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
吉岡 聖美 明星大学, デザイン学部, 教授 (80620682)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | アプリケーション / フレイル / リハビリテーション / 高齢者 / 嚥下機能 / 認知機能 / コミュニケーション / 顔ジャンケン |
研究実績の概要 |
フレイル(虚弱)状態の高齢者を健康な状態に引き戻すことを目的とした「アクティブアート」プログラムを開発するために、2022年度は、高齢者のフレイルに関わる現状調査を行なった。その結果、COVID-19感染予防対策の影響を受けてさまざまな介護予防事業が制限され、外出する機会や人との交流が減少したことに伴って生活不活発および社会性の低下(地域交流の低下)が基盤となったフレイルが増加・進行し、早期の対策が必要であることを確認した。 「アクティブアート」プログラムに取り入れる身体動作および思考トレーニングの要素を検討するため、医学領域の研究や介護予防普及啓発事業の取り組みに関する調査を実施した。その結果、「アクティブアート」プログラムに取り入れる身体動作となる嚥下機能の維持向上に働きかける要素については、臨床における誤嚥性肺炎への対策として十分なエビデンスがある嚥下訓練のリハビリテーションに含まれる口・頬の運動と発声訓練とを選定した。これにより、高齢者全般に留まらず、偽性球麻痺、脳血管疾患、発達障害患者・口腔癌術後患者などで流涎・取りこぼし・食べこぼしなどを認め口唇閉鎖機能が低下している患者等のリハビリテーションとしても広く活用可能なプログラムとなる。また、思考トレーニングとなる認知機能の維持向上に働きかける要素については、介護予防普及啓発事業において実践されている口腔顔面運動による後出しジャンケンの課題遂行が認知機能の維持向上に繋がることが示された研究に基づき、顔ジャンケンを活用することとした。これらの研究に基づいて、嚥下訓練と顔ジャンケンとを融合したプログラムを設計し、プロトタイプによる基礎実験を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
嚥下訓練、および、口腔顔面運動による後出しジャンケンを同時に実行することができる「アクティブアート」プログラムを設計して基礎実験を実施した。顔ジャンケンの表情と発声とを体験してもらうプロトタイプのプログラムを用いて、POMS短版およびTDMS-STによる心理評価を実施する大学生を実験協力者とした実験結果の分析を進めており、プログラム開発に関わる研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、下記の研究計画を推進する。 1)今後、要介護に陥るリスクの高い高齢者を対象にした「二次予防事業」、および、活動的な状態にある高齢者が生きがいをもって地域で自立した生活を送ることを支援する「一次予防事業」に関わる支援プログラムの取り組みについて、医療機関、および、地域包括ケアにおける取り組みを対象とした現状調査を行う。 2)「アクティブアート」プログラムとして心理的効果が見込めるデザイン要素を選定するため、提示画像の異なるプログラムを複数制作し、心理評価を比較するための実験研究を進める。 3)「アクティブアート」プログラムを構成するコミュニケーションの要素について検討するため、協力病院で実施しているオンラインリハビリに関する現状調査を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19感染予防対策により医療機関への立ち入りが制限されたため、協力病院における対面での現状調査が行えず、やむなくオンラインを活用して可能な範囲で聞き取り調査を実施した。そのため、対面で行う必要のある調査については、次年度に計画変更して実施することとした。当該研究計画に対応する助成金を次年度使用額とし、次年度の使用計画に組み入れる。
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