研究課題/領域番号 |
22K12705
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
下村 芳樹 東京都立大学, システムデザイン研究科, 教授 (80334332)
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研究分担者 |
根本 裕太郎 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 研究開発本部情報システム技術部IoT技術グループ, 副主任研究員 (60828086)
細野 繁 東京工科大学, コンピュータサイエンス学部, 准教授 (60846385)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 創造的設計 / 設計学 / 設計論 / アブダクション / 仮説形成 / 共感 / 概念空間 / 止揚 |
研究実績の概要 |
横断的な文献調査に基づいて創造的な発見が発動する機構を説明する仮説を形成した。さらに過去に発表された一般設計学の研究成果に着目し、上記の仮説を説明する理論を仮構成した。より具体的には、さらなる深堀調査、すなわち体系的な文献と事例調査に概念分析手法を組み合わせることにより、関連概念を俯瞰的に整理し、その結果に基づいて本研究におけるアブダクションと共感およびその関係を定義し、本研究の理論的基盤を整備した。この手順によりアブダクションと共感の特徴を明確にした上で、「アブダクションによる創造的発見の発動の一部は共感により説明できる」という本研究独自の仮説を発展させ、異なる主体間の共感がそれぞれの固有の概念空間の崩壊と再構成をもたらすという新たな考え方に基づき、「アブダクション」と「共感」の関係に係る理論を構築した。さらに過去の設計研究の予備調査により獲得済みであった、創造的発見におけるアブダクションの役割、また、設計における共感の形成プロセスに関する知見と上記で仮構築した理論の整合を検討した。
続いて、仮構成した理論に基づきつつ、経験的・実践的アプローチ(設計実験)により創造的発見の発動に係る上記の仮説の検証を試行した。具体的には設計実験によりリアルな設計を観察し、共感がアブダクションをもたらす過程を検出することにより、上記で構築した理論モデルの妥当性を検証した。この時、アブダクションも共感も設計者による内的な情報処理行為であるため、設計の観察の際はこれらの検出方法が大きな課題となったが、本研究では、設計者の設計に係る内的行為を検出するために、設計者が模擬的な設計課題を解決する過程において、顕在化した設計者の発話データ(プロトコルデータ)、描画データを獲得し、そこに含まれていた設計者の思考を分析することにより、設計者によるアブダクションと共感の発動を検出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は社会におけるcovid-19感染症の影響が依然として大きく、学外での研究活動や学会活動に多くの制約が生じたが、研究立案時に計画した年度計画は概ね達成できた。例えば年度当初は予定していた深堀調査、設計実験の実施が危ぶまれたが、影響は依然としてあったものの、感染状況の安定化に伴い、大学内での諸実験に対する制約が段階的に緩和されたため、最終的には問題なく予定通りかつ必要回数の設計実験を実施することが出来た。必ずしも面直で実施する必要は無く、オンラインでも可能であった設計者への追加の聞き取り調査や、研究遂行のためのミーティングは、ネット会議システムの活用により特に大きな問題なく実施することが出来た。 また学外活動についても、一部の学会は面直による開催に切り替えることが行われたが、例えば国際会議に関しては開催地によっては海外渡航に伴うリスクが依然として懸念された。しかしこの問題についても、オンライン開催やハイブリッド式により開催された学会を優先的に選択した他、国内で開催された国際学会への参加、投稿を重点的に進めた結果、当初予定通りの学会における成果発表を行うことが出来た。以上を総括すると、covid-19感染症の影響はあったものの、結果的に当初計画に沿う研究を実施できたことから、本研究はおおむね順調に進展できたと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」にも記載したように、今年度の本研究はcovid-19感染症による影響が皆無では無かったものの、研究活動に対する種々の制約の段階的な緩和とオンライン会議システムの活用により、結果的にほぼ計画通りの成果を達成することが出来た。従って、続く次年度も、現時点では当初予定通りの内容と計画の下で遂行する方針である。つまり現時点では、本研究に係る計画の変更は考えておらず、研究の遂行を阻害する新たな課題についても認識していない。 次年度の研究計画としては、他者が記号化し発信した外的情報を、設計者が新たな信念・知識として取り入れ自身の思考に反映させることで共感し、それを機にアブダクションが発動するという仮説の検証に取り組む。具体的には、設計実験において検出したアブダクションの発動時点近傍の発話データの詳細を分析し、発動したアブダクションの内容に関係すると推測される情報が発信、受信された時点を共感の成立時点候補として抽出する。そして、設計実験後に、被験者へ回顧的インタビューを追加実施し、上記で抽出した時点において実際に被験者にどのような共感が生じていたかを聞き取り、確認することにより共感の内容とその発生過程を分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
covid-19感染症の影響により予定していた一部の実験について回数や時間の削減をせざるを得なくなり、計上していた謝金、旅費が未消化となった。今回実施できなかった実験は次年度に順延して実施する計画であるため、これに係る経費も次年度に使用する予定である。
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