研究課題/領域番号 |
22K12770
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
式田 光宏 広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (80273291)
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研究分担者 |
川部 勤 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 教授 (20378219)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 呼吸計測 / 換気計測 / 細径センサデバイス / ピトー管 |
研究実績の概要 |
本研究では,肺内部での呼吸メカニズムを解明することを目的とし,呼吸状態を示す二つの物理量(「流量」と「圧力」)を計測可能にする「細径集積化センサデバイスを用いた換気計測システム技術」の実現を目指した。具体的には、今年度は細径センサデバイス開発を中心に、以下の研究課題を克服した。 (1) 細径プローブ上での圧力センサと流量センサとの集積化:本テーマでは、直径数mmサイズの細径プローブによる二つの物理量計測を実現可能にするセンサ構造を検討した。その結果、銅張積層板上での流量センサと圧力センサの集積化以外の方法として、ピトー管構造を応用した細径センサデバイスを新たに提案した。先ずは二つの光ファイバー型圧力センサを用いてピトー管型細径センサデバイスを作製した。そしてそれを医療用バスケット鉗子とハイブリッド実装した。 (2) 人工呼吸器を用いた細径集積化センサデバイス評価:本テーマでは、気道内径に応じたチューブ内(内径5.0 ~10.0 mm)に上記細径センサデバイスを挿入し流量検出に対する校正をした。また人工呼吸器の出口に気管支を模擬したチューブを形成し、その中に細径センサデバイスを挿入し、往復流下において呼気流量とチューブ内圧力の両物理量を取得できることを確認した。 (3) 動物実験による直接的換気評価:本テーマでは、上記細径センサデバイス開発と併行して試作デバイスによる動物実験を行い、本計測手法の有用性を実証する医学的データを蓄積した。具体的には、上記で開発した細径センサデバイスをラットの気道内気流計測に適用した。まず、各圧力センサで全圧と静圧を測定し、校正曲線を用いて動圧から流量に変換した。その結果、本システムにて気道内での呼気流量と気道内圧力の両物理量を取得できることを確認した。なお、実験は動物実験の設備が整っている名古屋大学医学部にて実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
交付申請書記載の研究計画に従い、本年度は、(1) 細径プローブ上での圧力センサと流量センサとの集積化、(3) 動物実験による直接的換気評価の二つの研究課題の克服に主に取り組んだ。その結果、(1)に関しては、銅張積層板上での流量センサと圧力センサの集積化構造以外の方法として、ピトー管を応用した新たな細径センサデバイス構造を発案した。そして二つの光ファイバー型圧力センサ(直径0.3mm)を用いてピトー管構造の細径センサデバイス(外径数mm)を試作した。具体的には二本の樹脂製チューブでピトー管構造を構成し、うち1本はそのまま使用し、残りは先端を塞ぐとともにその側面にレーザー加工機で穴を設け、それぞれのチューブ内に圧力センサを挿入した。そしてそれを気道内中央に位置決め固定することを目的とした医療用バスケット鉗子とハイブリッド実装した。本ピトー管型細径センサデバイスでは、流量は全圧と静圧との差から得られる動圧から算出し、静圧はチューブ側面に穴を設けた圧力センサプローブで直接的に計測した。そして上記細径センサデバイスで、チューブ内(内径5.0 ~10.0 mm)での「流量」と「圧力」計測が可能であることを実証した。また(3)に関しては、細径センサデバイスをラットの気道内気流計測に適用し、本システムにて気道内での呼気流量と気道内圧力の両物理量取得に成功した。更に2023年度下期から予定していた「(2) 人工呼吸器を用いた細径集積化センサデバイス評価」についても前倒しで着手し、人工呼吸器の出口に気管支を模擬したチューブを接続し、その中に細径センサデバイスを挿入し、往復流下において呼気流量とチューブ内圧力の両物理量を取得できる見通しを得た。以上の結果より、研究は当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後については、当初の予定通り、下記の研究課題を解決する予定である。 (1) 細径プローブ上での圧力センサと流量センサとの集積化:本テーマでは,令和4年度に引続き、新たに提案したピトー管型細径センサデバイスの改良に取り組む。具体的には、二つの圧力センサによるピトー管構造の見直し、流量および圧力検出特性評価(再現性、低流量域での感度)を検討する。 (2) 人工呼吸器を用いた細径集積化センサデバイス評価:本テーマでは、人工呼吸器の出口に気管支を模擬したチューブを形成し、その中に細径センサデバイスを挿入し、往復流下において呼気流量とチューブ内圧力の両物理量を取得する。そして管内圧力分布と管内流量とを計測し管内抵抗を評価する。また流体シミュレーション(CFD:Computational Fluid Dynamics)を用いて流れ場を解析し、細径センサデバイス形状の見直し及び最適化を図る予定である。 (3) 動物実験による実証:本テーマでは、令和4年度を引き続き上記細径センサデバイス開発と併行して、試作デバイスによる動物実験を行い、本計測手法の有用性を実証する医学的データを蓄積する。具体的には、実験動物の気道内に細径集積化センサデバイスを挿入し、肺内部での「流量」と「圧力」の同時計測を試みる。そして得られた二つの物理量をもとに気道抵抗など換気に関する呼吸情報を算出する。なお、実験は動物実験の設備が整っている名古屋大学医学部にて実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度予算して、当初、物品費750千円、旅費200千円、その他50千円を計上し、予算の75%を物品費(消耗品費)に充てていた。物品費の内、本センサデバイスの核となる光ファイバー型圧力センサについて、先ずは当研究室で保有していたセンサで動作原理実証が可能であったことから、消耗品支出を抑えることが可能となった。また、旅費については適宜、名古屋大学との打ち合わせをオンラインで実施したことにより、旅費支出についても同様に抑えることができ、その結果、残預金(621,593円)を次年度の研究経費に充てることが可能になった。令和4年度の残預金については、令和5年度予算と合算して、物品費1,171千円、旅費400千円、その他150千円を予定している。消耗品費についてはピトー管型センサデバイスの改良に伴う圧力センサに充当する予定である。また、旅費(その他を含む)については令和4年度に得られた成果を国際会議および国内学会にて発表する予算に補充する予定である。
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