研究課題/領域番号 |
22K12778
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
三嶋 雄太 筑波大学, 医学医療系, 助教 (80770263)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | Cancer Immunotherapy / MPS / Cancer-on-a-chip / 血管内皮細胞 / 免疫細胞 / AI画像解析 / ユニバーサルiPS細胞 / CAR-T cell |
研究実績の概要 |
固形がんにおけるがん免疫において、体の局所に存在する腫瘍を特異的に傷害するためには、血液がんのそれとは異なり、免疫細胞が血管を通って遊走し、腫瘍組織への浸潤の後、標的を認識し、活性化と増殖を通して標的を傷害するプロセスが必要である。従って、固形がんにおける免疫T細胞の腫瘍への遊走能力や浸潤能力がいかにして制御されているか、そのメカニズムと細胞傷害性効果との関係を明らかにすることができれば、固形がんにおけるがん免疫療法の抗腫瘍効果を向上させることが可能と考えられる。 本研究は、実際のがん患者由来組織、マイクロ流体デバイス技術、iPS細胞技術の3つの要素を組み合わせることによって、がん腫瘍組織を模倣したデバイスの開発を行い、体外でT細胞とがん腫瘍組織の相互作用をイメージング評価可能な in vitro モデル(免疫細胞を評価可能なTumor-on-a-chip)を構築する。それと同時に、このモデルを利用することで初めて検証可能となるT細胞機能評価を行い、その有用性の実証を目指す。 本年度は、患者さんごとに事前に免疫細胞や免疫チェックポイント阻害剤の効果を評価できるようにするため、2つのがん患者由来オルガノイドを開発中のシステムに取り入れることを進めた。また、観察ツールとして光学的に血管内皮細胞と他の細胞を区別できるように、iPS細胞の時点で蛍光タンパク質を導入した株を利用し血管内皮細胞を作製、デバイス中で蛍光免疫染色操作を行わずに区別可能にすることに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本計画課題は具体的には以下の4つの問いに対し、T細胞の応答を解析することで段階的に進めていく予定である。 ① 免疫原性を抑制したiPS細胞血管網を用いたTumor-on-a-chip構築により免疫拒絶反応を起こさず、T細胞の抗腫瘍効果・免疫抑制効果が再現可能か?② 抗原特異的な受容体を搭載したT細胞と、搭載していないT細胞の比較において標的細胞に対する反応の違いがデバイスにより評価可能か?③ 複数の患者由来オルガノイドを用いて評価を行い、腫瘍ごとの効果の違いが評価可能か?④ 免疫チェックポイント阻害剤の有無におけるT細胞の抗腫瘍効果の評価が可能であるか? この中で、今回は特に③の問に応えるために下記の進捗を見せた。 a.2種類の患者由来オルガノイド(CTOS法にて樹立、F-PDOライブラリーから取得)を使用して、これまで構築してきた Tumor-on-a-chip を作製できるか、用いる細胞(がん細胞、iPS細胞由来血管内皮細胞、がん線維芽細胞)の含有率の条件検討を行い、血管網が評価可能な Tumor-on-a-chip を形成できる条件を最適化した。 b.オルガノイドに混合するiPS細胞由来血管内皮細胞に関して、CRISPR/Cas9システムにより蛍光タンパク質を新たに導入したiPS細胞株を用いて、血管内皮細胞を作製し、その血管内皮細胞が3次元培養可能であることを確認した。これにより免疫染色不要で細胞腫を光学的に判別できる血管内皮細胞を得ることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、概ね当初目的としていた段階には到達するように着実に進捗を見せている。今後は本年度までに完了した、がんオルガノイドの構成細胞比率と蛍光色素導入iPS細胞由来血管内皮細胞を用いて、患者由来オルガノイドを用いて評価を行い血管網を接続した Tumor-on-a-chip を作製することができるか確認する。 上記と並行して、完成したデバイスによりT細胞の機能評価を行うため、T細胞側にレポーターを導入することで、構築した腫瘍オルガノイド内での機能を追跡し、T細胞の機能評価を通して、新規な患者由来がん腫瘍模倣モデルの開発に取り組む。
|