研究実績の概要 |
本研究目的として述べた「生理学実験等を通じ、網膜からの神経スパイク列を模倣して設計した刺激を脳皮質一次視覚野内へ与え、これに対する時空間的な神経応答を高速イメージングによって計測し、従来の刺激を用いた場合と比較解析を行う」の本格的な実施を開始した。我々の先行研究と同様、齧歯動物の脳冠状断切片を膜電位感受性色素で染色し、その脳皮質第1次視覚野内へ刺入した微小電極から刺激パルス列を与え、これに対する神経集団の時空間的な膜電位応答を1ミリ秒の蓄積時間刻みでイメージング計測した。刺激パルス列には、ホワイトノイズ時間系列の光強度変化に対する応答として、1)齧歯動物網膜の一過性応答型神経節細胞より記録した生体網膜スパイク列、2)昨年度開発の新規刺激システムにより同種細胞をエミュレートして生成した網膜模倣スパイク列、3)神経スパイク発火の数理モデルシミュレーションにより生成した準網膜模倣スパイク列、4)昨年度ソフトウェア実装した従来刺激システムにより生成した従来式パルス列、5)昆虫/無脊椎動物の視覚センサー機能に近い“Dynamic Vision Sensor”の電子回路モデルにより生成したイベントカメラ式パルス列、を用意した。これら5種の刺激パルス列自体について検討を行ったとともに、上記1,3,5については、これら刺激パルス列に対する脳皮質神経応答のイメージングデータを取得することに成功した。前者に関し、刺激パルス列が持つ情報符号化能について査読付き国際会議論文として発表した(T. Nokura et al.,IEEE 23rd Int'l. Symp.Comput.Intel.Inform., Hungary, 2023, pp.71-76, doi: 10.1109/CINTI59972.2023.10381907)。後者の実験結果について国際会議発表の投稿準備を行った。
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