研究課題/領域番号 |
22K12788
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
草生 真規雄 順天堂大学, 医学部, 准教授 (80534916)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 血漿交換 / アフェレシス / エクソソーム / 細胞外小胞 |
研究実績の概要 |
なぜ致死的難治性膠原病に対し直接病因を除去しているはずの血漿交換療法は有効であるにしてもゆっくり効くのか?この問いに対し我々は、現状の血漿交換療法では病原因子を直接除去しているのみならず、炎症に対し保護的に働いている細胞外小胞(EV)等の因子も無分別に除去しているため効果が緩徐に発現するのみに留まるのではないか、EVのうち炎症促進性のものだけを血漿交換療法によって選択的に除去し、同時に存在している抗炎症作用をもつ抑制的EVについては末梢循環血液中に還流させることにより、現在の血漿交換の治療効果をさらに増強させることが出来るのではないか、という仮説を立てていた。このため本研究ではその実証に向け、1)難治性膠原病における血漿交換療法前後で除去されているEVのうち炎症促進性、抗炎症性のものの割合と特性を明らかにすること、2)このうち炎症促進性のEVのみを弁別し除去する手段を明らかにすることを全体の研究におけるロードマップとしていた。 1)を達成する手段として、2022年(令和4年)度中には①血漿交換療法で分離された臨床検体において血漿中のEVは比重または粒子径により複数のサブグループへ分類ができるという証明を行おうとした。また、分類ができた段階で②分類したEVグループ別の特徴的表面分子マーカーについての解明を行うことを企図していた。 しかし通常治療の一環として血漿交換療法がなされた全身性エリテマトーデス症例において、治療後に分離された臨床検体としての血漿からは豊富な量のEVを検出できたものの、それらは濃度勾配などで弁別できるような差異を保持しておらずフローサイトメトリーによっても大きさ別に分類することが困難であったことから①の実証はできなかった。今後単離したEV毎にプロテオーム解析を行い、さらに特徴的なサブグループに弁別することが可能であるかどうかについて検討を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究を進めるに当たり前提としていた仮説に従い、血漿交換療法で分離された臨床検体において血漿中の細胞外小胞は比重または粒子径により複数のサブグループへ分類ができる、ということについて証明を行おうとしたが、全身性エリテマトーデスの血漿交換療法の際に得られた血漿検体中の細胞外小胞については、これまでに行った濃度勾配法またはフローサイトメトリーでは、サブグループに弁別できるような差異を確認することが出来ず、この実証については困難であった。 前提となる仮説の証明に時間がかかっていることから、研究全体の進捗にやや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究においては、細胞外小胞(EV)を単離あるいはごく少数の集団に分離したうえでEV毎にプロテオーム解析を行い、特徴的なサブグループに弁別することが可能であるかどうかについての検討を進める。もし弁別することが可能となれば、さらに分類したEVグループ別の特徴的表面分子マーカーについての解明を行い、ひいてはそれらの特徴をもつEVが具体的にはグループ毎に実際に細胞において炎症性または抗炎症性といったように異なる反応性を示すのかどうか、THP-1細胞を用いてⅠ型インターフェロンやサイトカインプロファイルの変化の有無についてELISAまたはマルチプレックスサイトカインアッセイを用いた検討を行う。これによりそれぞれ弁別したEVサブグループのうちどの分画、表面分子マーカーを有する一群が炎症性または抗炎症性に作用するのかを明らかにする。 こういった弁別により、どのEVグループが炎症性作用を持つのか、または保護的作用を持つのかが判明すれば、そのEVグループの特徴を捉えることで選択的に除去する治療への道が開ける。もしこれらのEVグループが特定の小粒子径を持つようであれば、既存で治療応用されている10~30nmのポアサイズをもち篩係数が異なる血漿分画器により選択的に分離・除去することが可能かどうかを明らかにする。また、もしこれらの炎症性EVグループが特定の表面マーカーを表出していると判明した場合には、既存で治療応用されているトリプトファンやフェニルアラニンといった疎水性アミノ酸をリガンドとした、あるいはポリマーコート吸着材をもちいた血漿成分吸着膜をもちいて、in vitroでこれらの炎症性EVグループが吸着材とコンタクトすることにより治療膜前後で吸着されているかどうかを明らかにする。うまく吸着ができていない場合には特徴となる表面分子マーカーを捉えうるような新規吸着剤の開発にも着手する。
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