研究課題/領域番号 |
22K12809
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
山本 哲也 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 特任助教 (40530366)
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研究分担者 |
福永 雅喜 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 准教授 (40330047)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 拡散強調画像法 / 磁気共鳴画像法 / 画像歪み補正 / 印加傾斜磁場補正 / 超解像技術 |
研究実績の概要 |
磁気共鳴画像法の一撮像手法である拡散強調画像法(DWI)は、水分子拡散特性から脳組織構造描出を実現する有力な脳イメージング技術である。ヒト生体脳計測では、限られた撮像時間で多方向の傾斜磁場(MPG)を印加してデータ取得する必要上、画像の解像度を優先できず、歪みが不可避な高速撮像を用いる。この画像歪みはMPG条件にも影響を及ぼすことから、これらの包括的な補正なくしては、いくら高解像化を図っても精度を伴わないばかりか、逆にアーチファクトを増大させてしまう。この問題を解決するべく、本研究では、MPGの重要なパラメーターであるb値・印加軸の実効値を正確に見積もる新手法を開発し、これにより実現する高精度DWIデータに複数の超解像技術を展開し、サブミリ単位のヒト生体脳DWI計測を実現し、高精細な神経線維走向や組織微細構造の描出への応用可能性を示す。 本年度はこの第一段階として、画像歪みにより、与えたMPG条件で想定されるものと乖離したb値・印加軸をボクセル単位で正しく見積もる手法の開発に取り組んだ。DWIに存在する3つの歪み因子の中でも、定量が比較的容易な傾斜磁場非線形性と静磁場不均一がもたらす画像歪みから、印加MPGへの影響を見積もり、ボクセル単位でb値・印加軸の実効値を導出するアルゴリズムの実装を進めた。また、これと並行して、アルゴリズムの妥当性を実測評価するのに用いる自作ファントムの設計を進めた。 次年度では、このアルゴリズムを残る歪み因子である渦電流に対しても展開するとともに、ファントムを用いた実測評価により、アルゴリズムの妥当性を検証し、複数の超解像技術の適用を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスによる入国制限のため、外国人技術者による7テスラMRIスキャナーの定期保守作業が大幅に遅れ、作業後もスキャナーの稼働が安定しない状況が続いた。この影響により、実験枠を当初の予定通り確保できず、実際に撮像を行っての検証を進めることができなかった。 また、研究申請時点で購入を計画していた海外製MRI用画像歪み評価ファントムの価格高騰により、これを自作することに方針を切り替え、設計に時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
b値・印加軸の実効値を正確に見積もる新手法の開発に当たっては、傾斜磁場非線形性と静磁場不均一の2つの歪み因子への対応が比較的容易であると考えられる一方、渦電流による影響の評価が難しい可能性がある。この場合、3つ全ての歪み因子に対応するアルゴリズムを実装してから、超解像技術の展開に進むのでは、研究計画に大幅な遅れが生じることになる。そこで、部分的に得られた高精度DWIデータに対し、複数の超解像技術を展開することも選択肢に入れて研究を進めることを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年になって急速に進んだ円安や物価高により、研究申請時点で物品として購入を計画していた海外製MRI用画像歪み評価ファントムの価格が大幅に高騰し、購入が難しくなった。そこで、ファントムを研究者自身で設計・製作することで、この費用を低減するとともに、コロナ禍以降の半導体不足に起因するコンピューター価格高騰に対応するために、2023年度に物品として購入を計画しているGPGPU搭載ワークステーションの予算を積み増す。
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