研究課題/領域番号 |
22K12818
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
伊勢 裕彦 九州大学, 先導物質化学研究所, 准教授 (10324253)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 線維症 / O-GlcNAc化タンパク質 / ビメンチン / デスミン / GlcNAc / 糖鎖高分子 |
研究実績の概要 |
これまでにN-アセチルグルコサミン糖鎖高分子AC-GlcNAc10及び死細胞から漏出したO-GlcNAc化タンパク質が、筋線維芽細胞に抗線維化活性を誘導できることを報告してきた。AC-GlcNAc10は、O-GlcNAc化タンパク質のGlcNAc構造を単純化して模倣したものであるが、GlcNAcの数がおよそ15個程度である。一方で、O-GlcNAc化タンパク質に修飾されているGlcNAcの数は数個程度であることから、AC-GlcNAc10のGlcNAc数は適切に模倣していない可能性がある。そこで、AC-GlcNAc10にアクリルアミドモノマーを混在させGlcNAc数を変化させた共重合体を作製して、これらの共重合体の筋線維芽細胞に対する抗線維化活性の誘導変化を検討した。その結果、GlcNAc数が数個程度まで減少させた共重合体では、筋線維芽細胞に対する抗線維化の誘導が著しく上昇することを観察した。このことからGlcNAcの数は、15個も必要ではなく数個程度でも筋線維芽細胞に相互作用し、抗線維化活性を誘導できる可能性を明らかにすることができた。そこで、GlcNAcを数個程度有するGlcNAc化合物を設計し、これらの化合物の筋線維芽細胞に対する抗線維化活性を検討していく予定である。また四塩化炭素誘導肝線維化モデルマウスの肝線維化肝臓内で、O-GlcNAc化タンパク質と活性化星細胞のデスミンとの相互作用をin situ proximately ligation assayで検出することができた。このことから、生体内の組織傷害において死細胞から漏出したO-GlcNAc化タンパク質が活性化星細胞と相互作用して組織修復に関与している可能性が明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GlcNAc糖鎖高分子のGlcNAc数を検討することで、筋線維芽細胞に対する抗線維化活性の誘導を増強することができた。また四塩化炭素誘導肝線維化モデルマウスの肝線維化肝臓内で、O-GlcNAc化タンパク質と活性化星細胞のデスミンとの相互作用を検出することができた。また四塩化炭素誘導肝線維化モデルに抗O-GlcNAc化タンパク質抗体を投与し、死細胞から漏出するO-GlcNAc化タンパク質の中和を行ったところ、線維化肝臓内のαSMAやコラーゲンの上昇が観察され、線維化の悪化が観察された。このことから死細胞から漏出するO-GlcNAc化タンパク質が、線維化の改善に働くことが推測された。
|
今後の研究の推進方策 |
NASH誘導肝線維化モデルマウスやブレオマイシン誘導肺線維症の線維化の改善を新規に合成したGlcNAc糖鎖高分子によって検討していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究が予定より進行し、予定していた一部の研究を実施しなかったため、残額が生じた。翌年度は、動物実験の実施予定のため翌年度請求した助成金と併せて使用する予定。
|