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多様な細胞で構成される細胞社会を理解するうえで,それぞれの細胞種を識別し解析することが重要である。しかし,膜タンパク質以外の細胞表面分子について,その発現量や分子種を指標に細胞を生きたまま識別する方法は確立されていない。本研究では,核酸-リン脂質複合体を用いた細胞表面修飾における細胞種依存性に着目し,細胞識別プローブへの応用を目指した。 核酸-リン脂質複合体の類似体を合成し細胞表面修飾を行った結果,核酸部が細胞識別に重要な役割を担っていることが分かった。また,修飾の細胞種依存性をもたらす細胞側要因を調べたところ,特定の細胞表面分子種の阻害剤存在下では,核酸-リン脂質複合体の表面修飾が起こることが分かった。さらに,核酸-リン脂質複合体による修飾効率と細胞表面分子種の発現量が相関関係にあることが分かった。以上のことから,細胞分類プローブとしての核酸-リン脂質複合体の分子設計およびその作動原理を明らかにすることができた。 核酸-リン脂質複合体の細胞分類プローブとしての有用性を調べるため,複数種の細胞を混合した分散液で検証した結果,修飾可能な細胞のみで蛍光が見られ,細胞が混在する状況でも使用可能であることを実証した。また,正常細胞とがん細胞の混合分散液の場合,がん細胞が蛍光陰性細胞として検出されることが分かった。 上述の核酸-リン脂質複合体は,特定の細胞種が蛍光標識されないturn-off型プローブであったため,特定の細胞種を蛍光検出可能なturn-on型プローブの設計にも取り組んだ。複数種のプローブを合成し検証した結果,がん細胞のみを蛍光陽性細胞として検出することに成功した。このことから,複数種の細胞が混在する状態で,どの細胞ががん細胞であるか1細胞レベルで特定可能なプローブとしての利用が期待できる。
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