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2022 年度 実施状況報告書

強化学習を利用した血管内治療の意思決定過程の可視化と術前計画法の提案

研究課題

研究課題/領域番号 22K12841
研究機関山口大学

研究代表者

森 浩二  山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (40346573)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード血管内治療 / 強化学習 / 可視化 / 操作 / 判断 / 応答性
研究実績の概要

本研究は,強化学習における報酬という定量化可能な指標を用いて血管内治療における医師の判断を可視化することである.研究初年度である本年度は,2つの技術に取り組んだ.一つは血管内治療を模擬した強化学習において,報酬がデバイスの操作にどのような影響をおよぼすか?である.二つ目は,報酬を算出する根拠になるデバイスの応答性(手元操作量とデバイス先端の移動量の比率)を,現実に存在する様々な血管形状で実験的手法を用いて取得する技術の開発である.
前者については,報酬を任意の値に設定する.さらに,危険な場所を仮定し,それを回避すると思われる報酬分布を手動で設計することにより,押す操作や回転操作の重要性を調べた.その結果,危険な場所の反対側の押す操作に対する報酬を高くすることにより危険な場所の回避率は上昇した.また,危険な場所の直前の回転操作に対する報酬の操作では回避率に大きな影響は表れなかった.以上のことから,術者は危険な場所が存在する場合,反対側を押すことを強く意識し,直前での回避操作(回転操作)は重要でないと考えている可能性が示唆された.
後者については,研究協力者である医師に,実際に遭遇する典型的な血管形状をイラスト化してもらい,それに基づいた2次元的な血管模型を作製した.その血管模型内にデバイスを挿入し,その時のデバイス挙動を画像処理によって定量評価した.またそれらの値についてガウス過程回帰やサポートベクターマシーンなどを用いて,影響をおよぼす因子について分析した.その結果,例えば,遠位側血管中心線ねじり回数,遠位側屈曲数,遠位側血管中心線のSUM(θ)/L が大きな値であるほど操作が困難になることを明らかにした.ただしこれらの因子は複雑に絡み合っており,明確にするためには深層機械学習などによる,より高度なデータ分析が必要あろうということが分かった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究初年度の計画は,応答性を強化学習の報酬へ変換する方法について検討することである.この計画に従って,血管内治療を模擬した強化学習において,報酬がデバイスの操作にどのような影響をおよぼすか?を調査した.また現実に存在する様々な血管形状で実験的手法を用いて取得することを試みた.
前者の研究から,術者は危険な場所が存在する場合,反対側を押すことを強く意識している可能性を示すことができた.強化学習の報酬分布と医師の行動を結び付けて解釈することは,本研究の目的である.それが仮想的な報酬分布を与えた強化学習研究とはいえ,実現できたことは,本研究課題における仮説である,報酬分布は医師の判断を代表して,それを読み取ることで医師の判断を可視化できるが正しいことを強く示唆するものである.
後者については,研究協力者である医師に,実際に遭遇する典型的な血管形状をイラスト化してもらい,それに基づいた2次元的な血管模型を作製した.その血管模型内にデバイスを挿入し,その時のデバイス挙動を画像処理によって定量評価できるようになった.研究実績で述べたように,血管形状と応答性の関係を明確に整理することに困難が生じるということは,研究計画時に予想されたことであり,想定の範囲内である.
これらの成果が得られたことについて,研究計画のとおりであり,おおむね順調に進展しているという判断が適切であると考えている.

今後の研究の推進方策

1年目に強化学習における危険部位回避のための報酬設計,および実際の血管形状における応答性を定量評価する実験技術の確立を行った.2年目は,2つの新規技術の開発と1つの技術改良を目指す.
新規技術開発の一つ目は,医師の実際の操作から,強化学習における報酬分布を推測する方法の確立である.これについては,逆強学習という手法が提案されており,論文等で発表されている.この技術を使って血管内治療を想定した逆強化学習プログラムに応用する.
新規技術開発の二つ目は,医師の操作を実際に取得するためのシステムを開発することである.実際の手術では医師はデバイスを指でつかんで操作している.この指の動きを捉えるのは技術的ハードルが高いので,ゲームパッドのようなコントローラーを使って,血管模型内にデバイスを挿入していく装置を開発する.これを使って人が,血管模型内にデバイスを挿入する際に,血管のどの部位で,どのような操作を行うのか?を記録することを目指す.
技術改良は,1年目の研究で明らかになった応答性に関する支配因子の解明である.深層機械学習の技術を応用して,実際に存在するような複雑な血管形状における応答性などに対して,影響をおよぼしている因子の特定やその影響力の大きさなどを評価する方法について検討する.

次年度使用額が生じた理由

計画はおおむね順調に進んだ.次年度使用額が生じた理由は実験に使用する消耗品が,当初見込みよりも安い値段で購入できたためである.次年度の使用計画として,実験装置に当初,血管内治療デバイス挿入時の観察用カメラを1台だけ備えていたが,より測定精度や取得できる情報を増やすために2台へと増設することを考えている.工業用カメラの価格が約10万円と,今回発生した次年度使用額と同額であることが,このような判断に至った理由である.これ以外の計画には変更はなく,申請時に計画した通りに予算を消化していく予定である.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (5件)

  • [学会発表] 学習データを用いた血管内治療デバイス先端の血管内での挙動の推定に関する研究2022

    • 著者名/発表者名
      餅田 純平,森 浩二,高嶋 一登,当麻 直樹,斉藤 俊
    • 学会等名
      日本機械学会2022年度年次大会
  • [学会発表] 応答曲面を用いたガイドワイヤーの応答性の評価2022

    • 著者名/発表者名
      末田 悠真,森 浩二,高嶋 一登,当麻 直樹,斉藤 俊
    • 学会等名
      日本機械学会2022年度年次大会
  • [学会発表] 血管内治療デバイスに与えられる押す/回転操作に対する応答性の測定2022

    • 著者名/発表者名
      森永 舞,森 浩二,高嶋 一登,当麻 直樹,斉藤 俊
    • 学会等名
      日本機械学会2022年度年次大会
  • [学会発表] Position Based Dynamicsを利用した血管内治療デバイスの挿入シミュレーション2022

    • 著者名/発表者名
      宮島 昂史,森 浩二,高嶋 一登,当麻 直樹,斉藤 俊
    • 学会等名
      日本機械学会 第 33 回バイオフロンティア講演会
  • [学会発表] 血管形状情報から挿入された血管内治療デバイスの形状と接触力分布を推定する方法2022

    • 著者名/発表者名
      篠田 拓也,森 浩二,高嶋 一登,当麻 直樹,斉藤 俊
    • 学会等名
      日本機械学会 第 33 回バイオフロンティア講演会

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公開日: 2023-12-25  

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