研究課題/領域番号 |
22K12852
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
林 直樹 藤田医科大学, 保健学研究科, 准教授 (00549884)
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研究分担者 |
安井 啓祐 藤田医科大学, 医療科学部, 講師 (50804514)
浅田 恭生 藤田医科大学, 保健学研究科, 教授 (60308848)
森 慎一郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 物理工学部, グループリーダー (60415403)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 赤外線深度 / 体表面監視 / キャリブレーション / 放射線治療 / マルチモダリティ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、三次元レーザスキャン技術と可視光解析・温熱感知機能を統合させた新しい体表面監視装置を開発し、臨床応用を目指すことである。開発予定の体表面監視装置の特徴は、① 三次元レーザスキャン技術のため、治療室内の明度に検出精度が依存しないこと。② サーモグラフィ機能を用いた体熱追跡により、固定具や被服上からも監視できること。③ 可搬性に優れ、CT撮像や治療時のみならず、手術時や温熱療法時にも応用可能なこと。④任意位置での座標校正を実現し、異なるモダリティであっても同軸座標評価が可能なこと。⑤可視光を分析することにより、シンチレーション現象の検出が可能となること。という点である。これらの点を達成するために、2022年度は三次元レーザスキャン技術と赤外線深度による検出技術の双方を比較し、三次元レーザスキャン技術での体表面監視は横断面の検出が赤外線深度よりも優れていることを明らかにした。また、治療室内の照度には検出精度に依存しないことも明らかにした。しかし、座標原点を決定するキャリブレーションにおいては、これまでのキャリブレーションファントムが手動で水平を取るデザインであったために治療寝台との連携が十分ではなかった。この点を改善するために新しいファントムを作成した。これにより任意位置での座標校正とモダリティ間での軸校正が理論上可能となった。これらの研究成果は現在論文投稿中である。また、この結果を踏まえて2023年度は実証実験に入る予定である。サーモグラフィ技術については、2022年度は十分な実験ができなかったが、2023年度に実施する予定である。全体を通し、当初の研究計画書通りに概ね順調に進んでいると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究期間で進める項目は次のとおりである:A) マルチモダリティ間での任意座標校正、B) 体表監視信号と熱追跡信号との融合、C) 可視光検知開発と弁別フィルタの実装、D) 数理解析アルゴリズムでの呼吸管理、E) 超高速体表位置計測アルゴリズム開発、F) モーション解析・追跡技術の開発、G) 客観的定量試験、H) 結果の取りまとめと論文執筆、I) 臨床研究への移行。この中で2022年度のうちに実施すべき内容はA) とE) とF) である。我々は三次元レーザスキャン技術と赤外線深度情報によるスキャン技術との比較を行い、三次元レーザスキャン技術の方が赤外線深度情報によるものよりも横断面の情報は明確に取得できることを明らかにした。これについては現在論文投稿中である。また、我々は赤外線深度情報を用いた検出において任意座標校正のためにCharCoBoardを用いてカメラ座標系、スクリーン座標系、世界座標系のマッチングを実施できるようにした。また、超高速に体表位置計測を実施するために、監視装置内での処理をマルチスレッド処理とするようにした。また、これらのシステムを用いて並進方向と回転方向の任意量移動を行ってのその観測実験を行ったところ、中心位置での位置精度については1 mm/1度を達成した。しかし、リアルタイム性が十分でないということや、視野を広げての観測、対象物への距離が遠いと観測ができないということが課題として挙げられることがわかった。そのため、可視光検知開発と弁別フィルタの実装や呼吸管理へは移行できていない。しかしながら、当初想定した予定通りには進んでいるため、ガントチャート通りに進行したと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の研究成果として、三次元レーザスキャン技術と赤外線深度情報を用いる方法との双方のメリットとデメリットを明らかにした。三次元レーザスキャン技術は赤外線深度情報によるスキャンよりも断面の情報を明確に検出できるが、省スペース化することは困難である。よって、この研究のコンセプトである可搬性のあり、任意の位置で座標を設けて位置情報を取得できるという項目を達成することは困難である。そのため、赤外線深度情報を用いる手法を応用するものも並行して研究して実現させることにする。任意の位置座表構築は両手法でも可能であるため、客観的定量試験をして両者の実用性について今後評価していく予定である。また、熱監視情報による位置照合に関してはまだ具体的な研究成果が出ていない状況であるため、現在進めている信号処理ソフトウェアを実装化して客観的定量試験を実施する必要がある。また、最終的には位置情報と熱監視情報を座標一致させて相互の評価できるようにする必要がある。これらの項目については2023年度および2024年度に実現させる必要がある。 その一方で、2022年度までに明らかにした内容については論文化して発表する必要がある。2023年度早期において論文の執筆を進め、できるだけ早く出版できるように尽力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度に三次元レーザスキャニング技術の構築と赤外線深度情報との比較を行ったが、これらはこれまでの物品を用いて実施することができた。その一方で、その実験が終了した後に熱監視のためのデバイスを購入する予定であったが、2022年度には熱監視情報の検出のためのデバイスは購入しなかった。そのため、当初2022年度に予定していたこの物品費分だけ抑えられている。この物品を購入しなかった理由としては、半導体価格や輸送費の上昇により、当初計上した予算よりも倍以上の金額を提示されたため、高額物品に該当することとなった。そのため、三次元レーザスキャン技術と赤外線深度情報解析の研究を優先し、価格が安定するまで購入を見送ることとした。しかしながら、2023年度になっても価格の下落は見られないため、代替品での実験に舵を切るか、高額物品の申請をして当初通りの想定物品を購入するかを検討し、早期に解決する。
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