研究課題/領域番号 |
22K12854
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
下戸 健 福岡工業大学, 情報工学部, 准教授 (40412457)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 再生医学 / 医用ロボット / スフェロイド融合 / 細胞構造体 |
研究実績の概要 |
血管や心臓の再生医療用3次元細胞構造体を作製するために必要となる細胞凝集塊(スフェロイド)について,これまで開発してきたスフェロイド形成システムを応用して,スフェロイドの融合特性を解明することが本研究の目的である.これに関し,スフェロイドの融合特性を解明することを実現するために,研究計画に従い以下の2項目について遂行した. まず,本研究の環境においてもスフェロイドを作製でき,スフェロイド同士の融合がおきるか,手技で予備実験を行った.ヒト脂肪由来幹細胞(Human Mesenchymal Stem Cells, hMSC-AT)を用いた実験では,問題なく作製できることを確認した.スフェロイドは特定のスフェロイドプレートで作製され,1つのウェルに対し1つのスフェロイドが生成される.そこで,生成された1~3個のスフェロイドを1つのウェルに集め,スフェロイド融合の予備実験を行った.さらに,スフェロイドが融合する過程をタイムラプスで撮影し,画像処理により形状の定量評価を検討した.時間経過によりスフェロイド同士が融合していく様子や,面積や真円度といった形態特性を確認することができた.スフェロイドを1つのウェルに集める際に物理的な刺激を与えないなど,予備実験から得られた知見をフィードバックし,スフェロイド同士を融合させる方法を確立させていく. 次に,これまで開発してきたスフェロイド形成システム機能統合を行った.研究環境に導入された最新のスカラロボットに合わせた周辺機器の選定および接続を行った.スカラロボットの稼動範囲や性能を考慮すると,これまで開発してきたシステムと比較して効率が上がる方法が確認された.そこで,開発しているシステムで使用する専用の冶具の設計および製作を行い,それに合わせたモーションについてプログラミングを行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は細胞を用いた実験のために必要な作業とスフェロイド形成システムの機能統合が目標である.本研究環境では扱った事がなかった細胞を使用したが,細胞培養も順調に行え,手技によるスフェロイド同士の融合に関する予備実験も行うことができている.研究成果として報告できる内容であり,日本機械学会で報告している.スフェロイド形成システムの機能統合では,研究環境に導入された最新のスカラロボットに合わせた改良が必要であった.具体的なモーション作成までに至っていないが,基本となるモーションのプログラミングや設定はできており,研究の進捗状況は順調である.2023年度においても更に研究を発展させていく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
hMSC-ATを対象とした,手技でのスフェロイド同士の融合実験を繰り返し,実験プロトコルを確立させていく.特に,スフェロイドが3個以上になると,接触するスフェロイドの個数に自由度が発生するため,本研究体制における医学系研究者に協力を仰ぎながら検討する.一方で,スフェロイドの回収の仕方や物理的に刺激を与えない方法といった,作業に関する特有の問題点も明らかにしていく.これらについて,スフェロイド形成システムで行う場合の,効率的なモーションについて検討しプログラミングを行っていく.スフェロイド同士の融合については,タイムラプスによる経時的変化を観察できている.定量評価として,スフェロイドの面積や真円度を計測したが,文献等を参考にして他の指標についても検討する.
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