研究課題/領域番号 |
22K12862
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
武村 哲浩 金沢大学, 保健学系, 教授 (70313674)
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研究分担者 |
林 直樹 藤田医科大学, 保健学研究科, 准教授 (00549884)
中山 和也 金沢大学, 保健学系, 准教授 (80242543)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 変形画像照合 / ゲル線量計 / 放射線治療 |
研究実績の概要 |
本研究は, FLASH放射線治療を見据えた将来の放射線治療のために, 電子線による放射線治療に対する線量分布の検証方法を検討する. 放射線治療に用いられる水等価なボーラスの代わりとしてシート状にしたゲル線量計を使用し, 放射線治療時に患者に与えられた電子線の照射範囲および表面線量分布の取得および解析方法を確立することが目的である. 初年度にはゲル線量計をシート状にする作成する方法や, 人体の上においての使用を想定したゲル線量計組成の検討を行った. 通常ゲル線量計にはゼラチンなど熱により融解するゲル化剤を用いてゲル状にしており, それによち水等価性, 3次元的な線量分布の保持が可能となっている. しかし, ゼラチンなどは30度を超えてくると一部が融解し測定するための線量の空間分布が保持できない, つまり人体の上に長時間おいておくことができない問題があった. 2022年度の研究でゲル化剤としてプルロニックを用いたゲル線量計を検討した. プルロニックは温度が上がることでゲル化する薬品であり, 体温に対しても安定したゲル化を示すことが確認できた. 合わせてシート状にゲル線量計を作成する方法を確立できた. ただし, プルロニックの使用によりゼラチンを用いたゲル線量計よりも紫外線を用いた照射では感度が下がる問題がある. ゲル線量計自体の検討と同時に解析方法の検討も行っており現状変形画像照合技術を用いて平面状にできる限界およびその際の精度を検討している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の申請書では2022年度の目標は「平らなシート状ゲルの作成方法を開発」としている. これには, 光学的にゲル線量計の線量読み出しに支障がなく, 耐熱, 耐薬品等も考慮し袋状容器を選択し, それを用いて均一の厚みにするための作成方法を検討すること, および必要な感度を示すシート状のゲル線量計を検討することとしている. この目標に関しては, 研究業績の概要で述べたように, 特にゲル化剤をプルロニックに変更したことにより耐熱(体温)性が向上したゲル線量計の作成が可能となった. 感度の問題はあるが, 増感効果の見込める材料を添加することで対応可能な範囲と考えている. 同時にゲル化剤などゲル線量計の組成の検討を行う中でシート状に作成する方法に関しても現状求められるものが作成できている. 通常のボーラスとシート状ゲル線量計の等価性も確認するとしていたが, コロナで医療施設での実験機会が制限されていたため実施できていない. ただし, 今後コロナによる制限が緩和される流れにあるため遅れは取り返せると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は, まずはシート状ゲル線量計の感度を上げる検討とゲルの硬さの最適化を行う予定である. また合わせて2022年度にできなかったボーラスおよびゲル線量計の等価性について測定する. 複数の市販ボーラスについてはすでに購入済みであるため, 実際に医療用機器を用いて測定し違いについて検討する. また, 2023年度からは画像照合技術等の画像処理技術を用いて, 放射線治療計画上の立体的に計算された線量分布を平らに変形させる技術の検討と平らにした際の正確さを検討することとしている. 現状, すでに検討を開始しており, 変形度合い(シート状ゲル線量計の曲がり具合によって精度が異なるため, 変形度合いと精度の関係を確認している. 2023年度後半からは, 体の起伏に沿って歪められ照射されたゲル線量計を平らに戻し線量分布を得る手法の開発としている. 上記2つができれば実際の線量検証方法を検討していくことになる. 上記2項目の進捗状況によっては遅れることも予想される.
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時予定した海外学会への参加がコロナのため見送った. その予定分が差額となったため, 今年度海外発表および情報収集として使用することとしている.
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