研究課題/領域番号 |
22K12866
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
森田 実 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (80510685)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 有限要素法解析 / 構造ー接触ー伝熱連成解析 / 超音波凝固切開装置 / 機械振動 / 医用デバイス |
研究実績の概要 |
超音波治療凝固切開装置の柔軟化を目指し,柔軟でエネルギロスの少ない超音波伝播部の開発と,鋭利で切開性能の高い先端エフェクタ部の開発の両面から研究している. 超音波伝播ワイヤに「より線」構造を採用することについて検討した.まず有限要素法により,超音波伝播に伴う「より線」の振る舞いをシミュレートした.結果「より線」は超音波を伝播することができる一方,「より線」の素線同士が擦れ合う問題が確認された.そこで,接触解析と伝熱解析を統合した連成解析モデルを作成し,素線同士が擦れ合うことで発生する摩擦発熱をシミュレーションし,ワイヤの構造毎の超音波伝播性能や発熱によるエネルギロスの違いについて議論した.結果から,ワイヤの構造的な工夫によって,発熱によるエネルギロスの小さいワイヤの構造設計について,その可能性を検討することができた.一方で,解析モデルに改良の必要が示唆される結果もみられ,今後の改善方法について検討中である. また,凝固切開のエフェクタである先端部分の構造設計として,市販の超音波凝固切開装置のブレード先端に,ハサミ型振動を励起する先端構造を加工し評価実験を行う予定である.本年度はその準備として,有限要素法を用いてハサミのように振動する振動モードを励起させるための構造設計を行い,その先端をハサミの刃のように鋭利な構造にすることによる効果を評価した.また,設計した超音波凝固切開装置を実際に加工し,牛血管を凝固切開する定量的な評価実験システムの開発を行った.ハサミ型構造に刃を付ける場合の加工方法は検討中であるため,現状は鋭利な刃は付けられていない課題がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は翌年度以降の実験を目指した構造設計が行われ,概ね予想通りの結果が得られた.一方で,刃を付ける構造設計において,その凝固性能にかかわる発熱性能が大きく低下する結果が得られたため,改良が必要である課題が見られたが,予想を大きく外れるものではなかったため,このまま計画を続行したいと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
解析結果を受けて,「より線」を用いた超音波伝播の基礎実験を行う.刃を付けることによる発熱性能悪化の課題については,再設計を行い実験に向けた改善を行う.柔軟でエネルギロスの少ない超音波伝播部と,鋭利で切開性能の高い先端エフェクタ部の両面から研究していくことで,柔軟かつ高出力な超音波凝固切開装置開発の目的に向けて邁進していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
刃付きの解析モデルの設計が終わっていないため,超音波凝固切開装置のブレードの購入を見送ったため. 再設計を実施し性能の向上を確認した後に,ブレードの購入費として使用させて頂きたいと考えています.
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備考 |
本申請に関連する超音波凝固切開装置に関する研究が国際会議ICIARE2022にて論文賞を頂きました.
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