研究課題/領域番号 |
22K12879
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研究機関 | 沼津工業高等専門学校 |
研究代表者 |
青木 悠祐 沼津工業高等専門学校, 電子制御工学科, 准教授 (70584259)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 協調診断ロボティクス / 超音波診断データベース / 肉体的・精神的疲労 / 協調動作 / 断層像処理 |
研究実績の概要 |
本研究では,総合診療領域における超音波検査,POCUS(Point-of-care Ultrasound)への関心が高まっている一方,「プローブ走査技術が取得断層像の精度に依存する」「検査者に筋骨格系障害が生じる」課題に対して,熟練者のプローブ操作手技,診断時の肉体的負荷を計測・解析し,取得断層像と関連付けたデータベースを構築,手技再現・協調検査を可能とするロボットを開発することで,臨床手技のRX(Robotics Transformation:ロボット変革)を実現することを目的としている.これにより,希少な症例を含む,プローブ操作手技と連動した超音波検査データベースが構築でき,研修医教育,症例報告や診断時の負荷軽減といった創発的な活用が期待できる.具体的には(i)生体情報計測に基づく熟練者のコツ・感覚レベルでのプローブ操作手技解析,(ii)断層像データベースに基づくロボットによる手技再現・協調診断システムの構築の2点を対象としている. 令和5年度は(i)(ii)を組み合わせたテーマについて実施し,ヒトとロボットの協調動作の際の生体信号計測・解析,断層像データベースに基づくロボットによる手技再現システムの構築を行った. まず,ヒトとロボットが協調動作を行う際の脳波を計測した結果,長時間の協調動作時によってヒトの精神的疲労は一定時間経過後に減少することを示した.しかし,精神的疲労は肉体的疲労の影響を受けるため,協調動作によってヒトの腕に負荷がかかる際,精神的疲労の減少幅が少なくなることが明らかとなった.プローブ手技,撮像画像に基づく断層像データベースを用いて,ロボットによる手技再現を行った実験では,ロボットの先端座標をデータベースに参照することで該当画像を出力することに成功したが,マッチング一致率は95.9%であり,データベース構築の改善点が見つかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的に対する進捗度は以下の通りである. (i)生体情報計測に基づく熟練者のコツ・感覚レベルでのプローブ操作手技解析 運動関連脳電位によるプローブ操作時の動作意図の推定を目的に,プローブ押し込み動作,水平移動,なぞり動作を行った際の脳電位を測定した結果,波形が異なることが確認された.また,脳電位による精神的疲労と筋電位による肉体的疲労の関係性を調査し,肉体的疲労が精神的疲労へと影響を与えることによってロボットとの協調動作による負荷軽減効果が減少することが明らかになっている.
(ii)断層像データベースに基づくロボットによる手技再現・協調診断システムの構築 プローブ走査時に,プローブ位置・姿勢情報,取得断層像を紐付けたデータベースを構築する計測系が完成している.この際のプローブ情報をロボット指令値とすることで手技再現にも成功した.一方,モーションキャプチャによって取得したプローブ情報をロボット座標系に変換する際,変換行列による誤差が生じていることから,改良が必要である.
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今後の研究の推進方策 |
(i)生体情報計測に基づく熟練者のコツ・感覚レベルでのプローブ操作手技解析,(ii)断層像データベースに基づくロボットによる手技再現・協調診断システムの構築の2点を組み合わせ,以下の研究を推進する. ・運動関連脳電位によるプローブ操作時の動作意図の推定に基づき,協調動作の際の制御に動作意図推定を適用させる ・上記と合わせて,ロボットとの協調制御に活用可能な生体信号パラメータの推定を進める ・プローブ走査手技と連動した超音波検査データベースを随時構築すると共に,断層像データベースに基づくマッチングシステムの精度向上を進める ・協調診断システムによる検証実験を行い,ロボット支援によるプローブ走査時の負荷軽減効果を評価する
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次年度使用額が生じた理由 |
現在,断層像データベース,マッチングシステムを同一のモバイルワークステーションで実施しているが,検証のため,別のモバイル端末を用意するとともに,ロボット制御用コントローラを新たに導入予定である.
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