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2023 年度 実施状況報告書

マルチオミックス解析を用いたヒトiPS細胞分化指向性制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K12900
研究機関国立医薬品食品衛生研究所

研究代表者

黒田 拓也  国立医薬品食品衛生研究所, 再生・細胞医療製品部, 室長 (70648857)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードヒトiPS細胞 / 分化指向性
研究実績の概要

ヒトiPS細胞は分化多能性を持つため、様々な細胞に分化することが可能である。しかしながら、神経や心筋など各種分化細胞への分化しやすさ(分化指向性)は 細胞株ごとに異なることが明らかになっている。これまでの研究において、核内タンパク質であるSALL3がDNMT3Bに結合してGene body領域のDNAメチル化を調節することにより、 複数の転写因子の発現を制御し、ヒトiPS細胞の分化指向性に非常に重要な機能を持つことを明らかにしている。一方で、SALL3はプロモーター/エンハンサー領域にも多く結合しており、その領域でのSALL3の機能は未解明のままである。そこで本研究は、これまで解明されていない SALL3によるプロモーター/エンハンサー領域における遺伝子発現制御機構を明らかにすることにより、ヒトiPS細胞の分化指向性のメカニズムを解明することである。本年度は、WT株、SALL3 KO株の未分化状態 (Day0)におけるヒストン修飾をChIP-Seqにより解析した。具体的には、活性化型ヒストン修飾としてH3K27Ac、H3K4me1、HeK4me3について、抑制型ヒストン修飾としてH3K27me3、H3K9me1、H3K9me3の計6種類のChIP-Seq解析によりヒストン修飾を調べた。その結果、WT株とSALL3 KO株の間ではヒストン修飾に変化が見られた。これらの遺伝子の中にはiPS細胞の神経分化に関与する調節因子も含まれており、これらの遺伝子領域のヒストン修飾がヒトiPS細胞の分化指向性に寄与している可能性は高いと考えられる。来年度は、神経分化時における経時的、ヒストン修飾のChIP-Seq解析、ATAC-seq解析等のマルチオミックス解析を進めていく。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

SALL3によるプロモーター/エンハンサー領域における遺伝子発現制御機構を明らかにすることを目的に、R5年度は、WT株とSALL3 KO株のヒストン修飾の比較解析を行った。まず、ヒストン修飾のChIP-Seq解析を行うために、hiPS細胞でChIP-Seqに使用できる抗体の評価を行った。その結果、活性化型ヒストン修飾としてH3K27Ac、H3K4me1、HeK4me3について、抑制型ヒストン修飾としてH3K27me3、H3K9me1、H3K9me3の計6種類のヒストン修飾の抗体がChIP-Seq解析に使用可能であることを確認した。評価した6種類のヒストン修飾について、まず初めに神経分化誘導前の未分化状態(Day0)でのChIP-Seq解析を行ったところ、WT株とSALL3 KO株の間で、神経分化や未分化維持に重要な転写因子のヒストン修飾に変化がみられた。これまでに行った、WT株、SALL3 KO株 の神経分化時(Day0, 3, 10)におけるマイクロアレイ解析結果と比較解析を行ったところ、未分化状態(Day0)ではこれらの遺伝子に発現量の有意な差は見出すことができなかった。以上の結果から、SALL3は神経分化や未分化維持に重要な転写因子のヒストン修飾を調節し、分化誘導開始前の分化開始前では殆どその発現量に影響しないことが示唆された。

今後の研究の推進方策

R6年度は、引き続き、神経分化過程における経時的(Day3, 10)なヒストン修飾解析をChIP-Seqを行うことにより進める。並行して、最初の実験で得られたSALL3 と物理的相互作用する転写因子について、WT株、SALL3 KO株(WTに比べ神経分化効率低下)を用いて神経分化時における経時的ChIP-Seq解析を行う。また、経時的なATAC-Seq解析を行い、遺伝子発現、ヒストン修飾、ATAC-Seqのデータを用いてマルチオミクス解析を通して、SALL3によるプロモーター/エンハンサー領域における遺伝子発現制御機構に重要な分子郡の同定を試み、SALL3を中心に神経分化における遺伝子発現制御機構を明らかにすることにより、分化指向性のメカニズムの解明を目指す。

次年度使用額が生じた理由

購入を予定していた試薬が製造中止となり、購入を取り止めたため。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] ROR2 expression predicts human induced pluripotent stem cell differentiation into neural stem/progenitor cells and GABAergic neurons2024

    • 著者名/発表者名
      Kuroda Takuya、Yasuda Satoshi、Matsuyama Satoko、Miura Takumi、Sawada Rumi、Matsuyama Akifumi、Yamamoto Yumiko、Morioka Masaki Suimye、Kawaji Hideya、Kasukawa Takeya、Itoh Masayoshi、Akutsu Hidenori、Kawai Jun、Sato Yoji
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 14 ページ: -

    • DOI

      10.1038/s41598-023-51082-4

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Single-Cell RNA-Seq Reveals <i>LRRC75A</i>-Expressing Cell Population Involved in VEGF Secretion of Multipotent Mesenchymal Stromal/Stem Cells Under Ischemia2023

    • 著者名/発表者名
      Miura Takumi、Kouno Tsukasa、Takano Megumi、Kuroda Takuya、Yamamoto Yumiko、Kusakawa Shinji、Morioka Masaki Suimye、Sugawara Tohru、Hirai Takamasa、Yasuda Satoshi、Sawada Rumi、Matsuyama Satoko、Kawaji Hideya、Kasukawa Takeya、Itoh Masayoshi、Matsuyama Akifumi、Shin Jay W、Umezawa Akihiro、Kawai Jun、Sato Yoji
    • 雑誌名

      Stem Cells Translational Medicine

      巻: 12 ページ: 379~390

    • DOI

      10.1093/stcltm/szad029

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Single cell RNA sequencing as a new tool for identifying a cell subpopulation that contributes to a pharmacological effect of human mesenchymal stromal/stem cells.2023

    • 著者名/発表者名
      Miura T, Kouno T, Takano M, Kuroda T, Yamamoto Y, Kusakawa S, Morioka MS, Sugawara T, Hirai T, Yasuda S, Sawada R, Matsuyama S, Kawaji H, Kasukawa T, Itoh M, Matsuyama A, Shin JW, Umezawa A, Kawai J, Sato Y
    • 学会等名
      ISCT North America 2023 Houston Regional Meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] Identification of a predictive biomarker for the angiogenic potential of human mesenchymal stem cells by single cell-transcriptome analysis.2023

    • 著者名/発表者名
      Miura T, Kouno T, Takano M, Kuroda T, Yamamoto Y, Kusakawa S, Morioka MS, Sugawara T, Hirai T, Yasuda S, Sawada R, Matsuyama S, Kawaji H, Kasukawa T, Itoh M, Matsuyama A, Shin JW, Umezawa A, Kawai J, Sato Y
    • 学会等名
      ISSCR Vienna International Symposium
    • 国際学会
  • [学会発表] シングルセル解析によるヒト間葉系間質/幹細胞の特性指標探索の試み2023

    • 著者名/発表者名
      三浦巧, 河野掌, 高野慈美, 黒田拓也, 山本由美子, 草川森士, 森岡勝樹, 菅原亨, 澤田留美, 松山さと子, 川路英哉, 粕川雄也, 伊藤昌可, 梅澤明弘, 河合純, 安田智, 佐藤陽治
    • 学会等名
      第23回日本再生医療学会総会

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公開日: 2024-12-25  

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