研究課題/領域番号 |
22K12911
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研究機関 | 東北福祉大学 |
研究代表者 |
関川 伸哉 東北福祉大学, 総合福祉学部, 教授 (60326717)
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研究分担者 |
岩田 一樹 東北福祉大学, 総合マネジメント学部, 准教授 (20515457)
昆 恵介 北海道科学大学, 保健医療学部, 教授 (30453252)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 深層学習 / 車椅子適合支援 / 姿勢推定 / 高齢者 / 身体寸法計測 |
研究実績の概要 |
初年度は,主に以下に示す2つの方向性から研究を実施した.一つ目は,深層学習を用いた車椅子適合に必要な解剖学的ランドマークの検出方法について研究を進めた.本研究では,写真撮影のみで車椅子適合に必要な身体寸法値の算出を行う計測システムの開発を目的に,深層学習(ニューラルネットワーク:NN)を用いて5つの解剖学的ランドマークの検出を試みた.研究に使用した写真撮影は,2022年7月~12月の期間に行い,被験者は100名(男性:52名,女性:48名)で,撮影した画像データは1名につき3枚取得(良姿勢,リラックス姿勢,脱力姿勢)し合計300枚の写真を用いて研究を進めた.ランドマークの検出には,事前学習済モデルを用いて26点のキーポイント座標を取得した.26点のキーポイント座標を用いて深層学習および線形回帰により5つのランドマーク座標を予測した.検出精度の評価指標には予測値と正解値間の決定係数,および平均絶対値誤差を用いた.4つのNNモデルと線形回帰モデルにおける検出精度の比較を行った結果.2つの指標ともに明らかにNNモデルの方が高く,いずれのNNモデルにおいても各ランドマーク座標を誤差20㎜以下の精度で検出可能であることがわかった.本研究内容は,論文として投稿を進めている. 二つ目は,車椅子適合支援(臨床介入)を2施設で実施した.高齢者福祉施設での臨床介入を通して,過去の実績同様に車椅子適合支援の効果検証及び評価を多角的に実施した.但し,コロナ禍の影響で介入が中止になることも度々あり,2施設合わせて12回の介入に留まった.介入事例については,介入前後の評価結果について分析を進めている.車椅子適合支援介入の効果については,「介護老人福祉施設における車椅子適合支援の効果に関する研究-介入前後比較からの多角的検証 -社会福祉学,Vol63-4,27-37(2023)」として投稿済みである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一つ目は,深層学習を用いた車椅子適合に必要な解剖学的ランドマークの検出方法について研究を進めることができた.研究計画の立案から始まり,実験計画,倫理審査後の被検者への協力依頼,予備実験,本実験に向けた100名の写真撮影,撮影データを用いた機械学習,複数のNNモデルを用いた評価など,1年間で様々な作業を進めてきた.本研究では,車椅子適合に必要な身体寸法値の算出を行う計測システムの開発を目的に,1枚の画像から5つのランドマーク座標(肩甲骨下角,肘頭,上後腸骨棘,腓骨頭近位端,大転子)を検出する手法を提案し,その検出精度の検討を行った.その結果,すべてのランドマークの座標を誤差5 pix(20㎜)程度以下で予測することが可能であることを確認できた.本研究結果は,年度末に論文としてまとめ現在,投稿に向けた最終作業を進めている.また,次年度の学会発表に向けた準備を進めている. 二つ目は,高齢者福祉施設での臨床介入を通して,車椅子適合支援の効果検証及び評価を多角的に実施した(継続研究成果).臨床介入の回数を,2施設合計12回と当初の予定の約1/2の実施となった.臨床介入を通して,車椅子適合支援の効果と課題等を明確にするとともに,本研究で開発を目指すシステムの導入評価を行う予定である.今年度もコロナ禍の影響で,急遽介入中止となることが多く,現在介入を続けている仙台市内の2施設以外に新たに介入可能な施設の開拓が必要と考える. 三つ目は,高齢者介護に関するリビングラボネットワーク(厚生労働省)や東北Kaigo-tech実践研究会等への参加を通して,本研究内容の発表や複数施設の管理者等とのディスカッションの機会を設けることができた.また,仙台市公式動画サイト『せんだいTube』への動画投稿を行った(依頼事業).
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目の今年度は,昨年度の研究成果を踏まえて主に以下に示す2点について重点的に研究を進める予定である. 一つ目は,深層学習を用いた車椅子適合に必要な解剖学的ランドマークの検出方法について完成を目指して研究を進める.現状では,すべてのランドマークの座標を誤差5 pix(20㎜)程度以下で予測することが可能であることを確認できた.今後の課題は,検出精度のさらなる向上を目指すこと,ならびに得られたランドマーク情報から身体寸法値の算出を行って精度検証を行うこと,そして,それをシステム化することである.現在,共同研究者の北海道科学大学の協力を得て,VIVONシステムを用いた精度検定に向けた準備を進めている.システム化に関しては,最終目標の臨床現場で使用を視野に入れ外部の協力事業所等も踏また検討を進める必要がある.今後は,システム全体の概要を構築する方向で研究を進める予定である. 二つ目は,オンライン適合支援の実施に向けたシステムの構築作業を進める予定である.本研究では,施設環境の違いを問わず全国での実施を前提に,タブレット端末以外の特殊な機器の準備を必要とせず,専門的な知識がない施設職員でも簡単に適合支援が実施できるシステムを想定している.本研究で開発するプログラムから入力された情報を,オンラインストレージ上で管理することを踏まえたプログラム開発を進める.2年目は,上記二つの作業を中心に実施する予定である.尚,臨床介入,論文作成に関しては,引き続き実施予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 次年度は,1,200,000円(内360,000円は間接経費)の請求を行っており概ね当初の予定通りに計画が進んでいる. (使用計画) 今年度は,昨年度の残金を含め予定通りに計画を進行する予定である.
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備考 |
仙台市公式動画サイト「せんだいTube」の依頼投稿動画
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