研究課題/領域番号 |
22K12911
|
研究機関 | 東北福祉大学 |
研究代表者 |
関川 伸哉 東北福祉大学, 総合マネジメント学部, 教授 (60326717)
|
研究分担者 |
岩田 一樹 東北福祉大学, 総合マネジメント学部, 准教授 (20515457)
昆 恵介 北海道科学大学, 保健医療学部, 教授 (30453252)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | AI / 深層学習 / 姿勢推定 / 車椅子 / 身体寸法計測 / 車椅子適合支援 / 開発 |
研究実績の概要 |
高齢者施設(以下,施設)入所者の8割以上が,車椅子を日常の移動手段もしくは,生活を営む上での中心の場としている.しかし,我々の調査結果によれば,施設入所者の多くは,不適合な車椅子を使用している.上述の問題を解決するために,複数の施設職員と共に個々の利用者に対して身体寸法・機能に適した車椅子を提供する車椅子適合支援を行ってきた.車椅子適合支援を行うためには,個々の利用者の身体寸法計測を行う必要がある.身体寸法計測は,解剖学的特徴点をランドマークとし,ランドマーク間の長さ等を測る必要があり,必要なランドマークを触診するスキルが求められる.しかし,多くの施設職員は,計測に必要な解剖学的ランドマークの把握が難しい.本研究では上記支援として人工知能に着目し, 深層学習を用いた姿勢推定モデルによるランドマーク検出の可能性について明らかにすることを目的とする.結果,以下に示す成果を得ることができた. 一つ目は,5点のランドマークを目的変数とし,事前学習済みの姿勢推定モデルにより算出されたキーポイントを説明変数とし実験を行った.姿勢推定モデルには,AlphaPoseを採用し26点のキーポイントを用いた.ラウンドマークの取得に向けて学習用の300姿勢の写真撮影を行った.結果,深層学習を用いた姿勢推定モデルによる身体寸法計測に必要なランドマーク検出の可能性が示唆された.但し,本実験は,画像上での精度であり,実測値とは異なる. 二つ目は,上記実験結果を踏まえて, 動作分析装置を用いて実測値との比較を行い精度の妥当性を検討した.結果,NN(ensemble手法)でランドマークを取得した際の平均絶対誤差は,X方向で48.5㎜,Y方向で29.6㎜と課題が残された. 三つ目は,適合支援を2施設で実施し合計24回の定期介入を行った.施設での臨床介入を通して,適合支援の効果検証及び評価を多角的に実施した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一つ目は,車椅子乗車時に特化し, 本研究で必要な標点を予測する姿勢推定モデルは存在しないため,本研究で必要なモデル構築を行った.姿勢,服装,車椅子の種類などが異なる画像データを取得し,その上で標点位置を指定するアノテーションを行い, モデルの最適化を目指した.本研究で用いる300枚の異なる座位姿勢の写真撮影を行い, 300枚の写真を用いアノテーションを行い, モデルの最適化を行った.写真撮影を行うにあたり,複数回の予備実験を行い撮影環境や撮影機器について検討を行った.本研究ではGoProを用い被写体との適切な距離を撮影位置の違いから実験を行い考察した.また,臨床応用を見据えてiPad等で実施した際の解像度の確認を行なった. 二つ目は,写真撮影のみで車椅子適合に必要な身体寸法値の算出を行う計測システムの開発を目的に,深層学習(ニューラルネットワーク:NN)を用いて5つの解剖学的ランドマークの検出を試みた.ランドマークの検出には,事前学習済みモデルを用いて26点のキーポイント座標を取得した.次に,26点のキーポイント座標を用いて深層学習および線形回帰により5つのランドマーク座標を予測した.検出精度の評価指標には予測値と正解値間の決定係数及び平均絶対値誤差を用いた.4つのNNモデルと線形回帰モデルにおける検出精度の比較を行った.結果,2つの指標ともに明らかにNNモデルの方が高く,いずれのNNモデルにおいても各ランドマーク座標を誤差20㎜以下の精度で検出可能であることがわかった.本研研究結果は,論文投稿し発刊済みである. 三つ目は,動作分析装置を用いて実測値との比較を行い精度の妥当性を検討した.結果,十分な精度を得ることはできなかった.現在,本課題の解決に向けて実験を行っている. 四つ目は,高齢者福祉施設での臨床介入を通して,車椅子適合支援の効果検証及び評価を多角的に実施した.
|
今後の研究の推進方策 |
3年目の最終年度においては,2年間の実施結果を踏まえて主に以下に示す2点について重点的に研究を進めることとする. 一つ目は,深層学習を用いた車椅子適合に必要な解剖学的ランドマークの検出では,概ね良好な結果を得ることができた.しかし,上記値は,画像上での精度であり実測値とは異なる.そこで,実測値との比較を行い精度の妥当性の検証を行う.精度検定は,画像から取得した長さと実際の長さの差によって評価する.尚,誤差の許容範囲としては±5mmを目指す.姿勢推定モデルによる標点位置予測の検証評価は,予測点と正解点(アノテーションされた指標値位置)の平均二乗誤差により評価する.平均二乗誤差は0に近いほど正確に予測できている. 二つ目は,誤差の許容範囲±5mmを目指し,キャリブレーション作業の追加,複数のニューラルネットワークモデルを用いた比較検討を行う.精度を上げるためには,予測精度が低いランドマークに着目し分析を行う必要がある.また,予測精度が低いランドマークを除外した際の結果についても検討が必要である.予測精度の低いランドマーク(大転子)無しの場合,x方向の平均絶対誤差は3.48 mm,y方向の平均絶対誤差は5.27mmと大幅に改善される.他のニューラルネットワークと異なり転移学習は,ダイレクトに予測を行うため,結果に反映されやすい.転移学習の妥当性についても検討を行う. 尚,臨床介入,論文作成に関しては,引き続き実施予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 次年度は,1,300,000円(内300,000円は間接経費)の請求を行っており概ね当初の予定通りに計画が進んでいる. (使用計画) 今年度は,昨年度の残金を含め予定通りに計画を進行する予定である.
|
備考 |
仙台市の公式動画サイトせんだいTubeに1章から10章を掲載
|