研究課題/領域番号 |
22K12921
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
高橋 智 岡山大学, ヘルスシステム統合科学学域, 准教授 (20236277)
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研究分担者 |
呉 景龍 岡山大学, ヘルスシステム統合科学学域, 教授 (30294648)
濱崎 一郎 岡山大学, 大学病院, 講師 (50600532)
江島 義道 岡山大学, 自然科学研究科, 客員教授 (60026143)
早見 武人 北九州市立大学, 国際環境工学部, 准教授 (60364113)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 両眼立体視 / 立体視不全 / VDT / 近見作業 / 単眼奥行き手掛かり / 両眼奥行き手掛かり / 輻輳機能 / 調節機能 |
研究実績の概要 |
社会生活にVDT(Visual Display Terminals)が不可欠となり、長時間の近距離視(以下近見)作業が常態化している現在において、眼精疲労に起因する肉体疲労、精神疲労の低年齢層への拡大が大きな社会問題となっている。このような状況に対し厚生労働省によりVDT作業ガイドラインが定められているが、VDT作業が与える視機能等への悪影響の様態と原因の詳細については未解明であり、機能回復と予防のための有効な方法は未だ確立されていない。本研究では、近見作業によって両眼輻輳と焦点調節の協調機能不全が発生するという仮説を詳細に調べる。 まず画像提示位置を任意に設定できる視距離可変立体画像提示システムを構築した。視距離と画像提示位置を設定して両眼輻輳距離と焦点距離を独立して設定した立体画像を被験者に提示し、奥行弁別能力を調べたところ、特に輻輳距離が立体視の可否に大きく影響することが分かった。 さらに両眼立体視における視線位置を測定したところ、両眼立体視能力によって提示刺激に対する視線位置の変化が異なる傾向がみられた。このことから、今後は両眼に提示する画像の情報と視線の関係を考慮して、両眼輻輳と焦点調節の協調機能不全の発生原因を検討する必要があるとの認識に至っている。 今後は、両眼立体視において、輻輳距離と調節距離が異なる奥行き刺激を提示したときの視線位置を同時に測定し、被験者の奥行判断プロセスを検討する。さらに簡易立体視検査装置を作成して両眼立体視機能不全者のスクリーニング検査を実施し、多くの不全者に対する検査も実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)立体視機能不全の様態解析と同定法の確立:既存の両眼立体視検査装置を用いて、検査条件(両眼視差、視距離等)と立体視機能の関係を調べた。正解者の奥行弁別能力に対し、不正解者の奥行弁別能力は低下する傾向がみられた。また立体画像視聴時の被験者の視線を測定したところ、正解者と不正解者で刺激の注視時間と注視位置に違いがみられた。しかし被験者数が少ないため、次年度以降も引き続き視線測定を行って検討する。 2)視距離可変立体画像提示システムの構築:左右ネジを用いて両眼画像に提示する画像を任意の視距離に設定できる視距離可変立体画像提示システムを製作し、その性能評価を行った。システムの光学系の配置から、視野角と視距離に対して提示可能な条件が制限されるものの、任意の視距離の位置に任意の奥行量の刺激を提示することができることを確認した。 3)視距離変化時の立体視奥行き認知能力の解析:任意の位置に停止させたモニタ上に、提示中心位置を変化させて画像を提示させ、任意の輻輳条件、調節条件における両眼立体視能力を測定した。その結果、モニタ位置の変化に対する奥行認知能力の変化は小さく、輻輳が奥行認知に大きく影響することが分かった。またモニタの同じ位置に刺激を提示したままモニタを前後に移動させた場合でも、奥行量の変化は小さいことが分かった。これの点について多くの被験者について実験を行い、輻輳と調節が奥行認知能力に与える影響について詳しく調べる必要があることが分かった。各条件の刺激奥行条件に対応した位置に画像提示可能な提示プログラムの準備を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
1)立体視機能不全の様態解析と同定法の確立:両眼立体視検査装置を用いて検査条件(両眼視差、視距離等)と立体視機能の関係をさらに詳しく調べる。また立体視視聴時に被験者が奥行を判断するまでの視線を測定し、奥行判断能力と視線移動との関係を調べる。同時に他の立体視機能検査を行い、不正解者の傾向を詳しく調べ、立体視機能不全の様態解析と同定法を確立する。 2)視距離可変立体画像提示システムの構築:視距離可変立体画像提示システムにおいて、視距離と両眼複勝距離を独立して調整可能な画像提示プログラムを作成し、調節条件と輻輳条件の違いによる奥行き認知能力の違いについて検討する。種々の条件における被験者の奥行認知能力を比較することによって、単眼奥行き手掛かりと両眼奥行き手掛かりの影響について検討する。 3)視距離変化時の立体視奥行き認知能力の解析:両眼視差固定条件で焦点調節機能を、モニタを固定した視距離固定条件で両眼輻輳機能をそれぞれ別々に評価し、両眼輻輳機能・焦点調節機能の協調と立体視奥行き認知量に関する機能健常者の動的視覚モデルを構築する。 4)立体視機能不全発生機構の解明:簡易な立体視検査装置を製作して多くの被験者に対してスクリーニング検査を行い、詳細な検査を必要とする両眼立体視機能不全者に実験参加を依頼する。両眼立体視機能不全者に対して奥行判断実験を行い、輻輳・調節協調と奥行認知量との関係を明らかにする。両眼立体視機能健常者と比較し、機能不全者の動的視覚モデルを構築する。 5)立体視機能不全回復訓練・予防法の確立:立体画像の奥行判断を行う知覚的学習実験の繰り返し訓練による回復効果と輻輳・調節の協調作用との関係を、組織的に測定・分析する。最適な訓練方法の要因を分析し、輻輳・調節の協調機能に着目した立体視機能不全予防法を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
両眼輻輳・焦点調節協調動作に着目した本研究において、瞳孔位置を測定することが重要である。輻輳機能を詳しく調べるために視線カメラを用いて両眼立体視における視線移動を測定したところ、正解者と不正解者に異なる傾向がみられ、輻輳機能を詳しく調べることが重要であることが分かった。本研究に配分された研究経費では計画当初に予定していたビデオ瞳孔計の購入が困難であることから、調節機能を画像提示位置の奥行調整によって制御し、視線位置と瞳孔径の連続測定による視機能評価を行うこととした。またコロナ禍で、被験者への謝金、および研究発表、情報交換のための旅費をほとんど使用しておらず、次年度使用額が生じた。令和5年度はこの使用額を考慮し、計画的に研究を進めていく予定である。
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