研究課題/領域番号 |
22K12927
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
井上 剛 大阪工業大学, ロボティクス&デザイン工学部, 教授 (00823527)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 起立動作支援システム / 筋電位 / ディスポーザブル電極 / 筋電計測ウェア / 動作支援 |
研究実績の概要 |
本研究では,下肢の筋電位の計測結果に基づき起立動作を支援するシステムにおいて,利用者が電極位置の知識やディスポーザブル電極を必要としない筋電位計測方法の実現を目的とする.本年度は筋の位置を意識せず装着するだけで電極が計測対象筋上に位置する膝サポータの試作及び評価を行った. 起立動作支援システムにおいて,起立動作の予測には内側広筋の筋活動を用いている.また,本システムではこの内側広筋の筋活動の減少量で支援量を判断し,過度な支援を減らす特徴がある.筋電位計測における電極位置の知識を持っていなくても,装着するだけで内側広筋の筋電位が計測できるようにするためには,多くの人が装着したときに内側広筋の筋腹上に電極が配置される膝サポータが必要となる. そこでまず,超音波計測器を用いて29人実験協力者の内側広筋の位置の計測を行った.膝蓋骨上部から下前腸骨棘に向かう直線の軸を長軸,その垂直軸を短軸とし,2cmごとに内側広筋の端がどこにあるかを調べた.この計測結果に基づき,全ての実験協力者が計測可能な電極位置を決定し,装着したときに電極がその位置になる膝サポータの試作を行った.なお,サポータに装着した電極は毎回廃棄する必要のないゴム電極とした. 試作した膝サポータを用いて1人の実験協力者に対し,起立動作時の内側広筋の筋活動を計測し,起立動作の検出信号として利用可能であることを確認した.さらに,本サポータを用いて起立動作支援システムを駆動させ,支援効果を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は膝サポータを用いた筋電位計測方法について検討,試作,評価を行った.まず,多くの人が膝サポータを装着するだけで内側広筋の筋電位を計測できる電極位置について検討を行った.具体的には超音波計測装置を用いて,約30人の内側広筋の位置を膝の骨である膝蓋骨上部を基準位置として調べる実験を行った.その結果に基づき計測実験の全ての協力者の筋電位が測れる電極位置を決定した.次に,膝サポータの試作を行った.サポータには膝用の穴が開いているタイプを用い,使用者による装着時の位置ずれを少なくした.実験により決定した位置に電極が配置されるよう膝サポータにゴム電極を装着した.このように試作した膝サポータを装着して起立動作時の内側広筋の筋電位が計測可能であることを確認した. このように,本年度は研究目的である,ディスポーザブル電極を使わず,さらに計測電極位置の知識を必要としない筋電計測方法の実現の可能性が示すことができたため,進捗は概ね順調であるといえる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度(令和4年度)は,約30人の内側広筋の計測結果から筋電位計測用膝サポータを試作し,計測可能であることを確認した.しかしながら,筋電位計測の評価実験を行ったのは1人に対してのみであり,計測実験では,わずかではあるが,動きによって接触インピーダンスが変化し,正しい計測値が得られない場合があることも確認された.従来のディスポーザブル電極は,ゲルとシールを用いることでしっかりと皮膚と電極を接触・固定するため,接触インピーダンスが低く,動きによる影響が小さい.一方,本試作膝サポータに装着したゴム電極は,布電極や金属電極に比べると動きによる影響は少ないものの,シールではなくサポータの圧力で皮膚に接触させているため,湿度や動きの影響を受けると考えられる. そこで次年度(令和5年度)以降は,より多くの実験協力者に対し,また温度や湿度が異なる日において評価実験を行う事で,試作した計測用膝サポータの有用性を検証するとともに,課題抽出を行いその対応を行う.さらに,マットや履物など,膝サポータより利用者の装着負担が少ない筋電位計測方法について検討し,実装・評価を行っていく予定である. まずは,これらの新たな計測方法による起立動作支援システムの実現を目指すが,さらにこの計測方法が,例えば歩行運動やペダリング運動など,より激しい動きの運動時でも計測可能か,その適用可能範囲を明らかにする予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験回数がわずかに予定より少なかったため,消耗品の購入が少なくなった.次年度はその分実験回数が増えるため,実験に必要な消耗品として利用する予定である.
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