研究課題/領域番号 |
22K12929
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研究機関 | 一般財団法人脳神経疾患研究所 |
研究代表者 |
齋藤 真 一般財団法人脳神経疾患研究所, 脳神経外科, 研究員 (80582824)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 正常圧水頭症 |
研究実績の概要 |
MR Elastography (MRE) は、主に人体組織の粘弾性を非観血的に評価可能な手法であり、肝硬変の精査等に使用されている撮像手法である。一般の臨床で使用されてはいないものの、先行研究では肝臓だけでなく脳に対してMREを用い、脳腫瘍の粘弾性の評価等が行われている。本研究では、正常圧水頭症患者のシャント術の治療効果を術前から予測し得る指標であるとの仮説の下、正常圧水頭症患者に対して脳のMREを撮像する方針とした。 一方、現段階では撮像する際に必要となる頭部撮像用の振動子が準備できておらず、今後もMREを撮像可能な条件が整わない可能性があるため、本年度は画像上の指標をCallosal angleの縦断的な評価を主に行った。Callosal angleであれば現在の設備でデータ取得が可能である。 本年度は主に特発性正常圧水頭症患者を対象に、シャント術前の1ヶ月以上間隔を空けた2点でMRIを取得し、またシャント術後約6ヶ月経過後に再度MRIを撮像し、各点でのCallosal angleを計測した。計測法は過去の文献に倣った。 現時点では3点全て計測しえた患者は2例に留まり、今後のデータ蓄積が必要であるが、2例の傾向としては、術前の2点でCallosal angleの狭小化が共に進行しており、水頭症による画像上の変化が確認された。また、シャント術後に臨床症状が共に改善し、Callosal angleは共に鈍化しており、画像上も改善している事が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究開始後約2年を経過したが、二次性正常圧水頭症、特発性正常圧水頭症、共に症例登録が極少数に留まっており、目標には凡そ到達していない。またCallosal angleの縦断的評価を完遂するためには長期的なフォローアップを要するため、今後もデータ蓄積には多くの時間が必要と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
頭部のMR Elastographyを撮像するための振動子を別個に作成し入手する必要がある可能性があり、場合によっては振動子の作成に時間を要する。 振動子が使用可能になり次第、撮像を開始する予定であるが、使用できない場合はCallosal angleの経時的変化等、現在入手可能なデータを用いて解析する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度は研究活動が実質的には行えず、研究費は全く使用しなかった事が理由である。 よって本来の使用計画を1年遅らせて使用していく予定である。 本研究者が所属している病院でMR Elastographyを撮像する場合、肝臓に対する粘弾性を評価するための振動子は存在するが、頭部を撮像する目的で使用する振動子は存在しない。先行研究では肝臓の評価のための振動子が流用されているが、頭部に対して同様に使用した場合、振動子が破損する可能性がある。臨床で実際に使用されているものであり、破損した場合は実臨床に支障をきたす可能性がある。あくまで研究目的であるため、新たに類似の振動子を作成する、或いは頭部の撮像に特化した振動子を新たに作成するために研究費が必要になると思われる。 頭部のMR Elastographyが撮像可能になれば、引き続き健常高齢者で研究に参加いただける方を募り、御快諾頂いた場合は謝礼を支払う。データが蓄積され学会発表、又は論文投稿が可能になれば、各費用を捻出する必要がある。
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