研究課題/領域番号 |
22K12941
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研究機関 | 熊本高等専門学校 |
研究代表者 |
島川 学 熊本高等専門学校, 電子情報システム工学系AEグループ, 教授 (40259958)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 人位置計測システム / 混雑度 / 視覚障害者 / 危険回避 / スマートフォンアプリ |
研究実績の概要 |
本研究では、視覚障害者が電車を利用する際に駅構内において安心安全に電車を利用できるように、スマートフォンに搭載されたカメラを利用して周辺状況を認識し、危険な状況を検知した場合には利用者に警告することのできるアプリを開発する。特に駅ホームでの転落事故を防止することに特化したアプリの開発を進めている。例えば、線路を検出してその位置関係から利用者が危険な状況にあるかどうかを判別する機能などを組み込む予定である。このアプリの有効性を検証する上で、駅ホームの実環境を想定することは必要不可欠である。人混みの中においても正しく動作することが求められるため、このアプリがどのくらい適切に危険を検知できるか、混雑の程度によってどのくらい影響を受けるのかを検証する必要がある。 初年度に当たる2022年度は人位置計測システムを導入した。人位置計測システムとは、複数台のレーザー測域センサを用いて計測される距離情報を統合し、領域内にいる人の位置を推定することのできるシステムである。本研究では、領域内にいる人の数や相互の距離関係から混雑の度合いを表現するモデルを作成することが目的の1つである。レーザー測域センサを3台設置し、人位置計測システムで通路を通る人の位置や動きを計測できることを検証した。 2022年12月に開催された日本福祉工学会九州支部大会において2件の研究成果発表を行なった。1つは「レーザー測域センサーを用いた混雑度指標に関する研究」で、人位置計測システムから取得できる情報を元に混雑の程度をいくつかのレベルに分けて表現する方法の提案である。もう1つは「駅ホームにおける視覚障害者向け危険回避誘導スマホアプリ」であり、これまでに開発してきた視覚障害者の歩行を支援することを目的とした障害物検知スマホアプリをベースとして、駅ホームにおける危険検知と回避誘導する方法の提案である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在の進捗状況はやや遅れている。2022年4月から開始予定であった人位置計測システムの導入と動作検証が大幅に遅れたことが理由である。日本学術振興会より基盤研究(C)(一般)の審査結果の通知を頂いてすぐ、人位置計測システム(HumanTracker2D)の開発メーカーである株式会社ATR-Promotionsに問い合わせたところ、半導体供給不足の影響等によりレーザー測域センサ(UTM-30LX-EW, 北陽電機)の供給も目処が立たない状況で、納品に1年は要するという回答であった。その後、状況が好転して、10月末にレーザー測域センサを3台だけ入手することができ、11月にようやく人位置計測システムを導入することができた。そのため、人位置計測システムの動作検証が7ヶ月以上遅れることになった。 人位置計測システムが導入されるまでの期間はスマートフォンアプリの開発を進めた。これまでの研究で、視覚障害者が歩行する際に危険となる障害物や階段などを検出するアプリを開発していた。しかし、今回の研究では駅構内、特に駅ホームでの転落事故を防止することに特化したアプリを開発するために、従来用いていた手法の見直しから始めることにした。いくつかの手法の特徴を整理し、その中で最も適した手法を選択し、現在、開発を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
人位置計測システムを用いて測定領域内にいる人の位置や動きを取得し解析する準備が整ったので、駅ホームを想定した環境で実験を行い、混雑の程度を表す指標モデルの妥当性を検証する。混雑度を定義する数値モデルとしていくつかの方法を検討している段階であり、比較を行う予定である。また、駅ホームを想定した環境ではなく実際の駅ホームで検証実験ができるように、鉄道会社にも協力を要請する。 混雑度モデルの検証を進めながら、スマートフォンアプリの開発も同時並行的に行う。本研究は視覚障害者の日常生活の利便性を高めることが目的であるため、アプリのプロトタイプが完成した段階で視覚障害者の方々に試用してもらい、意見をもとに改良につなげる。 得られた研究成果を、8月の国際会議、9月および12月の国内学会で発表できるように、推進する方針である。
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