研究課題/領域番号 |
22K12954
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
加納 伸也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究員 (20734198)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | センサ / 体水分 / 脱水 / 呼気 / 湿度 |
研究実績の概要 |
本研究では、呼気中の水分量を定量的に計測する技術を開発する。ヒトの体内に存在する水分量は、脱水予防の観点で重要であるが、その水分量を簡易的に評価することは難しい。ヒトの脱水予防への活用をめざして、本技術開発を進めている。2023年度は以下の研究を実施した。 2022年度に選定した温湿度センサの応答を詳しく解析することで、過渡的な応答から短時間でガス中水分量を推定する方法を検討した。2022年度の研究では、センサ応答が収束するまでにかかる時間は最短でも10秒あること、また、温湿度センサの応答は外気の影響をそれほど大きく受けない、という結果を得ていた。2023年度ではまず、調湿ガスの温度/湿度・センサの温度/湿度の4要素に着目しつつ、調湿ガスに曝露された際のセンサ応答を調べた。実験の結果、センサの過渡応答を数学的にモデル化できることを見出し、センサの実測値の収束を待たずガス中水分量を推定する技術を検討した。手持ちできるポータブル型デバイスプロトタイプの1次試作を行った段階である。 呼気中水分量のリファレンス値を得るための、据置型装置の試作を行った。研究計画で記載しているポータブル型に加え、据置型のデバイスを作製することで、より正確な計測ができて、ポータブル型装置の開発が加速すると思考した。従来の呼気ガス分析装置に倣い、マスクを使って呼気を採気する方式を採用した。現在、試作装置の改良を進めている。 研究代表者が開発する湿度センサに関して、高湿度での劣化を抑えることを進めた。開発センサは、応答時間2秒と比較的高速である反面、呼気レベルの高湿度下でのセンサ劣化現象が、本研究での応用を進める上で大きな課題であった。そこで、高湿度下での安定性向上を改良指針と決定した。センサ構造に使用する材質を再検討し、従来の開発センサと比較して、高湿度下で劣化が少ない結果が得られつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画に記載した、「呼気水分量を推定するデータの作成」に対応する、湿度センサの過渡応答をモデル化し、センサの実測値の収束を待たずにガス中水分量を推定する手法の検討が進んだ。デバイスのプロトタイプの1次試作が終了しており、パイロットスタディに必要なデバイス改良の段階に入った。一方、開発する湿度センサに関して、呼気レベルの高湿度下でのセンサ劣化が、本研究での応用を進める上で大きな課題となるとわかった。高湿度下での安定性向上を改良指針として、高湿度での劣化を抑える取り組みを進めた。以上の点を考慮し、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に検討したガス中水分量を推定する手法を組み込んで、呼気レベルの水分量を短時間に予測できるデバイスを確立する。調湿ガスを計測した場合の、据置型装置とポータブル型装置の計測結果を比較し、予測式での計測の妥当性を示す。予測式での計測妥当性が示せた後、呼気中水分計測のパイロットスタディに取り組む。本研究で仕上げる装置群をもとに、脱水に関わる研究開発を行う関係者に、デバイスの使い勝手や計測結果の価値について、ヒアリングを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に予定していた試験槽試作・センサシステム構築が、想定より安価に収まったためである。2024年度に進める、据置型装置やポータブル型装置の改良に必要な、物品の調達に使用する予定である。
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