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2023 年度 実施状況報告書

近現代アラブ思想・文学における「共存」構想とその実践

研究課題

研究課題/領域番号 22K12988
研究機関亜細亜大学

研究代表者

岡崎 弘樹  亜細亜大学, 国際関係学部, 講師 (30860522)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワードジェンダー / 女性解放 / イスラーム / アラブ / エキュメニカル / 世俗主義 / 市民社会 / 中東
研究実績の概要

2023年度においても引き続き、(1)ナフダ時代の女性解放論における「神学と社会学の併存」、ならびに(2)現代シリア思想にみられる「市民社会」構想という2つの課題について進展があった。
(1)については19世紀末アラブの女性解放論者カースィム・アミーンの翻訳書の校閲を終え、『アラブの女性解放論』というタイトルで2024年6月に刊行される見通しである。これに関連して分担執筆として『論点・ジェンダー史学』と『イスラーム・ジェンダー・スタディーズ第8巻――労働の理念と現実』にてアミーンの女性解放論の意義や女性の労働観についてのコラムを掲載した。さらに『アジア人物史第9巻――激動の国家建設』にて19世紀末のアラブ知識人ネットワークを論じる文脈にて、シリア系論客のアディーブ・イスハークとアブドゥッラフマーン・カワーキビーについての小論を担当した。
(2)については、「現代シリアにおける「市民社会」構想――読み替えへの抵抗」という査読論文が『唯物論研究年誌第28号』に掲載された。これに関連する主題について、5月に日本中東学会(筑波大学)にて「シリア・ムスリム同胞団員のパルミラ監獄手記を読む」、同月に政治思想学会(京都大学)にて「現代シリアにおける「市民社会」構想とその展開」、6月にISA International Conference 2023(Ifrane, Morocco)にてNew Form of Protest Shown by Syrian Islamists -Reading the Palmyra Prison Memoirs of a Former Muslim Brotherhood Memberというタイトルでそれぞれ研究報告を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

(1)ナフダ時代の女性解放論における「神学と社会学の併存」、ならびに(2)現代シリア思想にみられる「市民社会」構想という2つの課題についての進展は、上記のとおりである。
これに加え、一部の研究課題が当初の計画から派生して、大いに進展した。パレスチナ系米国知識人エドワード・サイードの没後20年にあわせて同氏のアラビア語原文論考「制限、回避、認識」を邦訳し、拙稿「アラブ近現代思想におけるサイードの位置づけ──シリアの哲学者サーディク・アズムとの比較を中心に」とともに、『思想2023年12月号』にて発表した。また日本中東学会第29回公開講演会「自伝が語る世界――近現代の中東・中央アジア」にて「2000年代シリアにおける自伝ブームとその行方――エキュメニカルな社会の模索」という主題にて基調講演を行った。
またパレスチナ情勢の緊迫化を受けて、戦火にさらされるガザ地区の人々を描いた記録映画「ぼくたちは見た ガザ・サムニ家の子どもたち」の上映と監督講演を企画・運営した。さらにシリア人短編小説家のイブラヒーム・サミュエル氏およびジャーナリストであるリーム・ホーリー氏を日本に招聘して、現代シリアにおける文学やジャーナリズム、ジェンダー的な課題に関する講演会・ワークショップ(一部オンライン)、関連する映画上映会を複数の大学で実施した。同様にアラブの左派知識人研究を専門とする在米レバノン人研究者(デューク大学)のファーディー・バルダウィール氏を招いてHow Can the Arab Left Contribute to the Liberation of the Peoples in the Middle East?という主題でワークショップを企画・実施し、中東研究者や文学研究者、思想研究者の間で活発な意見交換を行った。

今後の研究の推進方策

2024年度については、複数の課題について進展が期待される。
(1)ナフダ時代の女性解放論における「神学と社会学の併存」については、カースィム・アミーンの『アラブの女性解放論』の邦訳刊行に合わせてイスラーム地域研究者やジェンダー研究者を交えて、ブックローンチや合評会を主催する予定である。関連して近代アラブ思想史の専門家を海外から招聘して、アミーンの女性解放論をより広い思想史的文脈で検討するワークショップも計画している。
加えて一般向けの中東地域研究の概説書において、アミーンの女性解放論にも言及しつつ「中東の近現代思想」というタイトルにて分担執筆を担当した論考を発表する。さらに2025年の刊行に向けて、パレスチナ系米国人研究者ウサーマ・マクディシー氏の『共存の時代――エキュメニカルな枠組みと近代アラブ世界の形成』(出版社承諾済み)の監訳を進めていく。
(2)現代シリア思想にみられる「市民社会」構想ならびに(4)現代シリア文学にみられる「複合的なアイデンティティ」については、シリア人女性作家サマル・ヤズベク氏を6月に他の科研との共催で日本に招聘し、複数の大学で講演会あるいはワークショップを実施する予定である。さらに11月に開かれる北米中東学会年次大会にて、ヤズベクとともに一世代前のシリア人女性作家ガーダ・サンマーンの両作品を比較検討した上で、War and Identity Shifts among Syrian Women Writersというタイトルで研究報告を行う見込み(プロポーザル受諾済み)である。
なお、これに関連して、「アラブの春」を再考する近刊の編著にて、シリアの章を分担執筆し、「抵抗の〈源泉〉から考える〈シリアの春〉」というタイトルで論考を発表する予定である。

次年度使用額が生じた理由

執行率は約99%となったが、2023年度末の招聘事業実施に関連して、少額の残金が生じ、次年度に持ち越した。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (3件)

  • [雑誌論文] 現代シリアにおける「市民社会」構想 ――読み替えへの抵抗2023

    • 著者名/発表者名
      岡崎弘樹
    • 雑誌名

      唯物論研究年誌 エコロジーからの抵抗

      巻: 28 ページ: 190-211

    • 査読あり
  • [雑誌論文] アラブ近現代思想におけるサイードの位置づけ――シリアの哲学者サーディク・アズムとの比較を中心に2023

    • 著者名/発表者名
      岡崎弘樹
    • 雑誌名

      思想2023年12月号

      巻: 1196 ページ: 37-53

  • [学会発表] シリア・ムスリム同胞団員のパルミラ監獄手記を読む2023

    • 著者名/発表者名
      岡崎弘樹
    • 学会等名
      日本中東学会第39回年次大会
  • [学会発表] 現代シリアにおける「市民社会」構想とその展開2023

    • 著者名/発表者名
      岡崎弘樹
    • 学会等名
      第30回政治思想学会
  • [学会発表] New Form of Protest Shown by Syrian Islamists -Reading the Palmyra Prison Memoirs of a Former Muslim Brotherhood Member-2023

    • 著者名/発表者名
      Hiroki OKAZAKI
    • 学会等名
      ISA International Conference 2023, Ifrane, Morocco
    • 国際学会
  • [学会発表] 2000年代シリアにおける自伝ブームとその行方――エキュメニカルな社会の模索2023

    • 著者名/発表者名
      岡崎弘樹
    • 学会等名
      日本中東学会第29回公開講演会「自伝が語る世界-近現代の中東・中央アジア」
    • 招待講演
  • [図書] アジア人物史 第9巻 激動の国家建設、「アディーブ・イスハーク、アブドゥッラフマーン・カワーキビー」(684-692)2024

    • 著者名/発表者名
      姜尚中総監修、青山亨、伊東利勝、小松久男、重松伸司、妹尾達彦、成田龍一、古井龍介、三浦徹、村田雄二郎、李成市編、岡崎弘樹(分担執筆)
    • 総ページ数
      968
    • 出版者
      集英社
    • ISBN
      9784081571093
  • [図書] 労働の理念と現実 (イスラーム・ジェンダー・スタディーズ8)、「コラム1 カースィム・アミーンにおける女性の労働観」(55-57)2024

    • 著者名/発表者名
      長沢栄治監修、岩﨑えり奈、岡戸真幸編、岡崎弘樹(分担執筆)
    • 総ページ数
      272
    • 出版者
      明石書店
    • ISBN
      9784750357393
  • [図書] 論点・ジェンダー史学、「〈コラム7〉科学と宗教―イスラーム圏―」(78)2023

    • 著者名/発表者名
      山口みどり、 弓削尚子、後藤絵美、長志珠絵、石川照子編、岡崎弘樹(分担執筆)
    • 総ページ数
      320
    • 出版者
      ミネルヴァ書房
    • ISBN
      9784623093502

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公開日: 2024-12-25  

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