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2022 年度 実施状況報告書

宗派間の交渉から見た東アジアの草木成仏思想

研究課題

研究課題/領域番号 22K12995
研究機関神奈川県立金沢文庫

研究代表者

櫻井 唯  神奈川県立金沢文庫, 学芸課, 非常勤事務嘱託員 (30822978)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード華厳宗 / 宋版単刻本 / 中世東国仏教 / 草木成仏
研究実績の概要

令和4年度は、湛睿の草木成仏説の検討に先立って、鎌倉から南北朝の華厳宗における宋代仏教の受容という観点から、称名寺および高山寺(京都府)所蔵の南宋版単刻本とその写本の閲覧調査を行い、成果の一部を査読付き学会誌『東洋の思想と宗教』第40号にて発表した。宋版についてはこれまで主に書誌学的な見地から研究が進められてきたが、本研究では、出版という新たな技術・文化と仏教思想との関係という観点から考察を加えた。鎌倉時代には、宋版の輸入や寺院での開板事業が各地で活発化するのであり、古来日本で流通していた写本とは別系統のテキストを持つ宋版の登場は、日本中世の華厳宗の思想形成にも影響を及ぼしたと考えられる。
さらに、当時最新の学説であった宋代華厳宗の学説を湛睿がどのように受容したかという問題の考察に先立ち、神奈川県立金沢文庫管理・称名寺所蔵の湛睿撰『華厳演義鈔纂釈』および『華厳五教章纂釈』等の断簡の整理を行い、『大正新脩大蔵経』や『大日本仏教全書』所載のテキストとの対照を進めた。
また、叡山文庫(滋賀県)における調査では、草木成仏論に関わる資料の閲覧調査を行い、叡山文庫真如蔵『法相宗十疑』のテキストを検討した。加えて、称名寺聖教の調査中に発見した新出の山王神道写本群の分析により、これまで知られてこなかった比叡山と称名寺の交流の形跡を見出すことができた。今後は、考察の対象となる時代や地域の特徴にも目配りしつつ、草木成仏論の展開を考察していきたい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

令和4年度は、神奈川県立金沢文庫の管理する称名寺聖教の写本を中心に研究を進め、成果の一部を学術雑誌に発表することができた。ただし、新型コロナウィルス感染症の影響により関西での原典調査が年度の後半期にずれ込んだため、称名寺以外の寺院が所蔵する資料の分析がやや遅れている。また、称名寺聖教中に含まれる湛睿稿本の整理に関しても、目録の情報と現物とが相違することがあり難航している。

今後の研究の推進方策

称名寺聖教の調査を進めるとともに、他所所蔵の関連資料との比較を行い、草木成仏論の展開を中心に考察を進めてゆく予定である。殊に、「研究実績の概要」で述べた新出の称名寺所蔵の山王神道写本群は、中世の比叡山と東国仏教の関係を考えていく上で新たな知見を得られる可能性がある。そのため、当初の研究計画には含まれていないが、当該資料群についても他所所蔵資料と照らし合わせながら調査研究を進め、令和5年度中にその概要を報告したいと考えている。
称名寺聖教の整理に関しては、当初、湛睿の主要な華厳関係著作について現行テキストと称名寺所蔵の写本とを対照できる一覧表の作成を目指していたが、そのためには現物の再調査が必要であることが判明した。数十点にのぼる断簡類の再調査を本研究の期間内に達成することは困難であると判断し、本研究に特に必要な範囲に留めることとした。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウィルス感染症の影響により、本年度に計画していた叡山文庫(滋賀県)での文献調査のうち1回を実施することができなかった。そのため、追加の調査を次年度に実施予定である。また、発注した輸入書籍の納入が遅れ、納品が次年度となった。以上の理由により、旅費と物品費の一部を次年度に使用することとした。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] 南宋における華厳宗章疏の刊刻と教学の展開――智儼撰『孔目章』を例に2023

    • 著者名/発表者名
      櫻井唯
    • 雑誌名

      東洋の思想と宗教

      巻: 40 ページ: 74-93

    • 査読あり

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公開日: 2023-12-25  

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