研究課題/領域番号 |
22K12996
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 亘 東京大学, 大学総合教育研究センター, 特任助教 (60931847)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | ランシエール / 美学 / 落語 / お笑い / 自由間接話法 |
研究実績の概要 |
2021年度はランシエールの芸術思想とマイノリティの解放思想との関係について考察するにあたり、もっぱら「自由間接話法」の観念に定位して研究を行った。 具体的な研究成果としては、京都工芸繊維大学で10月に開催された美学会全国大会において、映画思想における自由間接話法の政治的意義という観点から、(パゾリーニの議論を援用した)ドゥルーズ、ランシエールを比較検討する発表を行った(「自由間接話法の政治的諸効果――パゾリーニ、ドゥルーズ、ランシエール」)。ドゥルーズとランシエールは自由間接話法が既存のヒエラルキーを揺さぶると見る点では一致するものの、その力点は異なる。ドゥルーズがショットや物語における映画作家と登場人物の生成変化に着目する一方、ランシエールは映画作家の主体的身分をあくまで確保したうえで、作家による素材選択や技法の効果に注目している。ランシエールにおいて自由間接話法は、異質なものの組み合わせによる現実の再構築という意味での「フィクション」の操作に属するものであり、それにより既定の感性の枠組みを再編成する点で政治的たりうるのだ。こうした議論の導入により、ドゥルーズが省略した自由間接話法の美的形式面に新たな政治的可能性を与えつつ、パゾリーニが批判していた作品群をもその政治性において再評価することができる。以上の検討を通じ、自由間接話法の観念に新たな光を当てることを試みた。 その他、周縁的文化事象と芸術との関係を巡っても研究を行った。具体的には、落語や漫才という日本文化が批評を通じて芸術として制度化される過程について、考察を深めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
芸術と政治の関係について(とくにマイノリティの解放思想に関して)、「自由間接話法」という観念を通じて検討する道筋を開くことができた。これは今後の研究遂行にあたって大きな手がかりとなった。2023年度も自由間接話法の美学的・政治的効果に関する発表が予定されている。美学会全国大会での発表の論文化についても、すみやかに行う予定である。 また『アイステーシス』読解についてはまだ具体的成果として世に問うことができていないが、こちらも公開できるよう、最大限努力したい。
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今後の研究の推進方策 |
上記発表の論文化を23年度中に行う。『アイステーシス』読解についても23年度中に成果を発表したい。 また23年度下半期に落語に関する研究会が始まる予定である。それを通じ、落語を始めとする大衆芸能の芸術化・制度化についても研究を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
調整しきれないごく少額の残金が発生した。
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