研究課題/領域番号 |
22K13016
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
鈴木 美香 (五十嵐美香) お茶の水女子大学, グローバルリーダーシップ研究所, 特別研究員 (90909756)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 観光と音楽 / サウンドスケープ / 古関裕而 / 福島駅 / 日常と非日常 |
研究実績の概要 |
2022年度は研究計画1年次に示した通り、①音楽と観光に関わる国内外の関連先行研究の整理、②JR福島駅発車メロディ(古関裕而作曲メロディ2種を使用)を対象とした資料調査・現地フィールド調査を実施した。①に関しては、民族音楽学、ミュージック・ツーリズム研究領域の先行研究について、地域住民とツーリストにとっての「日常/非日常」に主たる焦点を当て整理した。②に関しては、現地調査を2022年6月15日、10月15日、11月13日、12月23日の計4回実施し、福島駅周辺での古関メロディ使用状況調査、「福島市古関裕而記念音楽祭」を含めた関連イベントでの参与観察、古関裕而記念館職員2名へのインタビュー等を行った。 これらの成果に関しては、まず、12月4日実施、サウンドスケープ協会秋季発表会にて「“聴く主体”と音との関係性を探る―福島駅周辺における古関メロディ使用の現状から―」として発表し、サウンドスケープ・音楽学・音環境デザイン・芸術関連政策等に関わる諸研究者と成果を共有し、今後の研究方向性に関する意見を含めた重要な議論を得ることができた。また、所属研究機関であるお茶の水女子大学での「みがかずば研究員交流会」においても成果発表を行い、幅広い研究領域の研究者より意見聴取を行ったことも重要な成果である。 さらに、①②の調査に関する成果をまとめ、査読付き英語論文“The New Relationship between the Ordinary/everyday and the Extraordinary in Research on Music and Tourism ―Focusing on the Soundscape in Fukushima―”として発表した。日本国内の重要な事例を、音楽と観光に関わる最新の研究として、国内外の研究者と共有を可能にした重要な成果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の1年次計画の通り、先行研究の整理、研究対象である発車メロディや使用曲に関する資料収集、現地フィールド調査を順調に進めることが可能な状況であったため、進捗状況はおおむね順調である。 今年度は、コロナウイルス感染対策に起因する地域施設の一時閉館、あるいはコンサートや駅周辺でのマルシェ等のイベント中止はほぼ見られなかった。よって、フィールド調査では、各イベントにおいて、地域住民の演奏参加、市や古関裕而記念館のイベントへの関与等について、参与観察によって具体的な状況を把握することができた。 また。古関裕而記念館職員の方々より、本調査に対する全面的な協力を得ることができ、インタビュー調査の実施に加え、地域の学校との関わりを含めた統計調査情報に関しても貴重な情報をご提供頂いた。これらによって、本研究課題は順調な進展が可能となっている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の調査より、福島駅発車メロディ、そして使用曲である古関裕而作曲作品(いわゆる「古関メロディ」)が地域と非常に密接かつ多様な関わりを継続的に有してきたことが明らかとなってきた。 市とメロディの関与を例にとれば、観光マップ作成等の観光推進事業、地域ホールで開催される関連コンサートの企画・運営、市内を走行するメロディバスの運行等の各事業によって、観光課・文化振興課・交通政策課、のように担当部署が異なるかたちで運営されていることも明らかとなった。これに関しては、今後、市関係者へのインタビューを含めた情報収集、調査が必要となっており、2023年度中に実施予定である。 さらに、2023年1月13日には、古関裕而が「野球殿堂入り」を果たし、長きに渡り福島市長を中心に地域で行ってきた活動が結実した。これに加えて、コロナ収束による観光業の活性化も重なり、朝ドラ「エール」(2020年度前期放送)を中心とした観光推進事業がさらなる変化を遂げつつある。この変化を継続的に調査することによって、これまで先行研究では考察されてこなかった、音楽と人間との多様な関係性の一端を明らかにすることが可能となると考える。 よって、当初の計画では、2年次は年度初旬より、JR宇都宮駅、江の島電鉄藤沢・鎌倉駅での調査を実施する予定であったが、上記JR福島駅周辺調査を3カ月程度継続し、さらなる調査を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
まず、当初の研究計画1年次で予定していた学会参加への渡航・滞在費が、一部学会がオンライン開催となったため不要となったこと、また古関裕而関連コンサートが学会1件開催日と重なったため、フィールド調査を優先し学会対面参加を1件取りやめたため、当該助成金が生じた。また、計画では、フィールド調査を一定期間(7日間・4日間)宿泊滞在することに実施する予定であったが、イベント開催予定やフィールド調査の有効性の観点から、全体の渡航回数を増やし、日帰りで複数回にわたって調査する方針とした。よって宿泊費分が当該助成金の一部として生じた。 これらに関しては、翌年度、福島での継続的なフィールド調査回数を増やし、各イベントへの継続的な参加、市関係者へのインタビューを含めた充実した調査・検討を行うために使用していく。また、パンデミック収束により、学会等も対面開催が推奨される状況にあり、関連3学会、また海外での学会発表への対面参加によって、研究者相互の充実した情報収集・情報交換を行っていく計画である。
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