研究課題/領域番号 |
22K13018
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
越智 雄磨 東京都立大学, 人文科学研究科, 准教授 (80732552)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | パリ・オペラ座 / バレエ / コンテンポラリー・ダンス / 民主化 / オリエンタリズム / コロニアリズム / 多様性 |
研究実績の概要 |
今年度は、研究計画に従い、パリ・オペラ座が発行した「パリ・オペラ座における多様性に関するレポート」を精読した。その結果、パリ・オペラ座が、これまでの上演の中にコロニアリズムやオリエンタリズムと結びついた非ヨーロッパ圏および有色人種に関する差別的表現があったこと、性差別や階級差別についての表象があったことを反省を行い、作品によってはレパートリーから削除ないし演出やタイトルを改変する取り組みを行なっていることが判明した。具体的には『優雅なインドの国々』(1735)や『ラ・バヤデール』(1810)などが相当するが、とりわけ、クレマン・コジトールが演出し、バントゥ・ダンブレが振り付けた新版『優雅なインドの国々』(2019)は、クランプというストリート発のダンススタイルを取り込む画期的な演出となった。しかし、パリ・オペラ座バレエ団では、北米におけるアロンゾ・キングのようにクラシックバレエの文脈で仕事をする黒人振付家が招聘されたことは未だなく、多様な出自のアーティストを招聘することが課題としてみられている。 また、パリ・オペラ座バレエ団がバレエダンサーの身体に均質性を求め、白人ダンサーを中心に構成する傾向について、カロリン・カールソンやバンジャマン・ミルピエなどのかつての芸術監督たちはそれを多様性と相反する要素であるとみなし、問題視してきたことが明らかになった。それに加えて、「レポート」では、今後、例外的に活躍してきた非白人のアーティストの再評価を課題としていることも判明した。 そのほか、フランス国立図書館の分館であるパリ・オペラ座付属図書館および国立ダンスセンターで、パリ・オペラ座の歴代芸術監督と総裁についてのインタビュー記事などの資料を収集した。これらの資料は、今後オペラ座の主導者たちが「民主化」という思想をどのように具現化しようとしたかを考証する上での重要な資料となるだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の研究成果を論文にまとめる予定であったが、コロナ禍等の影響から研究出張が遅れたため、それに至らなかった。また、年度末に行った出張において、パリ・オペラ座附属図書館で収集できた資料が予想以上に多くあり、その整理と解釈に時間がかかっているためである。次年度にこの成果を論文として発表したい。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度には、新版『優雅なインドの国々』に関する批評や21世紀以降の3人のパリ・オペラ座バレエの芸術監督(ブリジット・ルフェーヴル、バンジャマン・ミルピエ、オーレリー・デュポン)と2人の総裁(ステファン・リスナー、アレクサンダー・ネーフ)のインタビュー記事を整理、精読、傍証し、各芸術監督と総裁がオペラ座の「民主化」に関してどのような思想を持ってディレクションを行ったのかを考察して論文にまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入しようとしていた資料や機器の購入が遅れたため。今年度に購入を行う予定である。
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