研究課題/領域番号 |
22K13030
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
雨宮 高久 日本大学, 理工学部, 助教 (40610580)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 核融合 / 核融合懇談会 / 核融合反応懇談会 / 研究所 / 湯川秀樹 / 原子力局 / 原子力委員会 / プラズマ研究所 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、国内の研究機関に所蔵されている文献史料に基づき、核融合研究黎明期に発足した研究者の自主的組織「核融合懇談会」の発足までの動向と同懇談会を中心とした核融合研究者コミュニティによる研究体制の構築について明らかにすることを目的としている。 令和4年度は京都大学・基礎物理学研究所・湯川記念館史料室、日本学術会議・図書室、自然科学研究機構・核融合科学研究所・核融合アーカイブ室にて文献史料の調査を行った。その結果、「核融合懇談会」が研究者の自主的組織として正確・方針を決定するまでの動向を明らかにすることが出来た。以下、その概要を記す。 当初、「核融合懇談会」は旧科学技術庁原子力局から提供される研究費(主に「原子力平和利用研究委託費(以下、委託費)」)の使途に意見を述べることが、懇談会発足の目的として位置づけられていた。その際、京都大学・湯川記念財団が研究費の受託元として想定され、同財団内の小委員会でも短期間(昭和33年9月まで)であれば財団として委託費を引き受けることなどが承認されていた。ところが、委託費の使途には制限があり、それを自由に変更することも出来ないことが判明すると、湯川秀樹を研究代表者として科研費綜合研究への申請が決定する。この時、文部省大学学術局・研究助成課長であった中西勝治は湯川に対して、科研費の研究組織が「研究者の自主的な集まり」であることを求めた。このことが影響して、「核融合懇談会」は研究者の自主的組織という性格・方針を確定させることになった。つまり、「研究費」の存在が「核融合懇談会」の目的や方向性に大きな影響を及ぼしていたと結論される。 このほか、令和4年度は核融合研究者コミュニティでの「研究所」発足に関する議論の変遷や日本学術会議第27回総会での「核融合」に関する提案の検討過程についても、本研究課題で調査・分析した文献史料から明らかにすることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は、上記した3つの研究機関で文献史料の調査を行った。調査・分析した文献史料としては、「核融合懇談会」が発足した当初の動向を示す原子力委員会や日本学術会議総会、湯川記念財団小委員会の議事録、研究者の間で交わされた書簡などが挙げられる。 それらの内容を分析した調査結果は、日本科学史学会および日本物理学会にて発表した。また、プラズマ・核融合学会第39回年会のシンポジウム「プラズマ・核融合サイエンスチャートを通じた学際交流」にパネラーとして参加し、核融合研究開発の歴史および本研究課題を通じて明らかに出来た「核融合懇談会」発足当時の動向について報告した。パネラーとしての登壇は当初の予定には無かったが、普段は研究発表を行わないプラズマ・核融合学会に参加し、関係者と議論できたことで、本研究課題を遂行していく上で有益となる新たな知見を得られることが出来た。 その一方で、研究機関での史料調査から、調査・分析すべき文献史料の数が当初想定していたよりも多いことが判明した。ただ、エフォートの関係上、年度内に複数回にわたって同一機関で文献史料を調査することは出来なかった。そのため、次年度(令和5年度)にも本年度に調査を実施した研究機関で、再び文献史料の調査を行う必要がある。だが、全体を通しては、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度も引き続き、国内の研究機関に所蔵されている文献史料の調査・分析を進めていく。令和4年度にも調査を行った京都大学・基礎物理学研究所・湯川記念館史料室、日本学術会議・図書室、自然科学研究機構・核融合科学研究所・核融合アーカイブ室に加えて、令和5年度は高エネルギー加速器研究機構・KEK史料室や名古屋大学・物理学教室・坂田記念史料室、国立大学法人東海国立大学機構・大学文書資料室などでの史料調査も実施する予定である。また、文献史料の調査・分析結果は学会で発表するほか、令和5年度は論文として取りまとめ、欧文誌への投稿を目指す。さらに、研究に必要となるプラズマ・核融合分野の文献史料のうち、古本として入手可能なものは入手する。 このほか、「核融合懇談会」発足前後の動向を年表・データベースとして総括する作業も令和5年度から開始することを予定している。
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