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2022 年度 実施状況報告書

宴歌を対象とした平安期における社交詠の研究

研究課題

研究課題/領域番号 22K13047
研究機関皇學館大学

研究代表者

吉井 祥  皇學館大学, 文学部, 助教 (60844751)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード餞別 / 宴 / 贈答 / 唱和 / 和歌史 / 上代 / 中古 / 和歌の機能
研究実績の概要

本研究は、平安期の宴を場とする和歌に着目し、①どのような表現で以て詠歌され、どのような機能を果たしたのか、②上代から平安初期の漢詩文の隆盛を経て、どのような展開を辿ったのか、③平安和歌史の中でどのように展開したのか、この三つの問いを解明することで宴を軸に平安時代の社交詠を解明することを目的とする。
第1年度である2022年度は、数ある宴の内、送別の際に行われる餞宴に着目した。そして、以下の内容に取り組んだ。
・社交詠として宴歌を捉えるために、宴で詠われた歌と非対面における一対一の遣り取りの歌について比較した。歌に見られる表現の特徴の違いを指摘し、場における和歌の機能の違いについて集団性と個別性の観点から考察した。本成果は『むらさき』第59輯に掲載された。
・平安の別れの歌について概要を捉えた上で、餞宴に着目した。『万葉集』に見られる餞宴の歌と比較し、平安の餞宴の歌の特徴として、別れの悲しみの共有と、知的な言葉遊び表現にあることを指摘した。本成果は『文学・語学』第236号に掲載された。
さらに、科研費以外の成果となるが、今回の研究課題に関わる論として、現存する歌集の詞書や、古記録等の漢文文献を対象として、和歌における「和す」という語の用例を検討し、唱和歌という詠歌形態について再考した論も公表した。「和す」る歌が現れやすい場に宴があり、特に漢文文献では、漢詩の唱和詩を意識し、和楽的な営みを演出する効果があったのではないかと指摘した。この成果は『日本文学』第71巻第12号に掲載された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現在、宴の内、餞宴に特化して研究が進められた状況にあり、餞宴に関しては、概ね順調に進んだため、この区分を選択した。申請時には、初年度は場の違いの面に特化する予定であったが、上代から中古に至る和歌史的な観点からの考察まで至ることが出来た。一方で、申請時には花宴(花を賞翫する宴)についても取り扱う予定であったが、かつて取り組んだ哀傷歌の研究と、今回の餞別の歌の研究により、場による詠歌の違いは十分示せたといえる状況であるため、花宴は次年度以降の平安期の宴歌の諸相と展開を捉える際に分析することとした。また、上代と平安の各宴の歌の整理に着手した。

今後の研究の推進方策

第2年度は、平安の宴歌の諸相について、万葉の宴歌の研究成果を応用して分析する。第1年度は餞宴に特化していたが、第2年度は花見や行幸等、宴の範囲を広げる。歌集収載歌の他、『伊勢物語』や『うつほ物語』『紫式部日記』等散文作品に描かれた宴とその詠歌、また、歌合の記録等も広く対象とすることで、平安時代の宴歌の諸相とその特性、および万葉から平安前期に至る史的展開を考察する。
第1年度を終え、餞別の歌については、中世へ至るまでの和歌史を考察する必要性を感じている。そのため、第3年度の平安後期の宴歌の展開を考察する際には、中世を意識しつつ検討していく予定である。

次年度使用額が生じた理由

新刊での購入を予定していた書籍を古本で定価より安く購入したことにより、2,881円の差額が生じた。今後購入予定である書籍の前倒し購入に使用する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] 餞別の歌と場―〈宴〉と「つかはす」に着目して―2022

    • 著者名/発表者名
      吉井祥
    • 雑誌名

      むらさき

      巻: (59) ページ: 34-45

  • [雑誌論文] 別れの歌の史的展開―万葉から平安へ、餞宴に着目して―2022

    • 著者名/発表者名
      吉井祥
    • 雑誌名

      文学・語学

      巻: (236) ページ: 72-84

  • [雑誌論文] 平安和歌における「和す」―歌集詞書・漢文文献を資料として―2022

    • 著者名/発表者名
      吉井祥
    • 雑誌名

      日本文学

      巻: 71 (12 ) ページ: 14-27

    • 査読あり

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公開日: 2023-12-25  

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