研究課題
近世堂上和歌においては後陽成天皇の作成した歌枕書及び古典文学作品の注釈書の成立と内容を精査し、そこから後陽成天皇自身の和歌がどのような影響を受けて作られたかを分析した。後陽成天皇の和歌事績については、特にその内容が十分に明らかにされていなかったため、この点で学界に資するものとなったと考えている。成果として学術論文一件を作成、公表した。また同様に、古典文学作品の理解が和歌作成に対してどのような影響を及ぼすのか、後陽成天皇と契沖にも検討対象を広げ、成果として学術論文一件を作成、公表した。同時代における堂上の和歌と地下の和歌の方向性の違いについて、一部分ではあるが明らかにすることができた。また、堂上における女性の和歌活動について考えるため、栄子内親王(霊元天皇皇女)の筆写資料を読み解き、近世堂上和歌における位置付けを行った。江戸時代中期から後期にかけて、堂上歌壇で女性が活躍する様子を具体的資料によって明確にできた。成果として学術論文一件を作成、公表した。地下歌人については木下長嘯子を扱い、その和文の記述内容から、近世初期における『源氏物語』をはじめとする古典文学の享受の様子を明らかにし、成果として学術論文一件を作成、公表した。また狂歌関係資料として、近世初期に出版された仮名草子『四生の歌合』についても口頭発表を行い、出版文化に関わる研究を進めることにもつながった。『四生の歌合』の研究成果については2023年度に学術論文として発表することを計画している。
1: 当初の計画以上に進展している
コロナ禍で調査はやや少なくなってしまったが、すでに出版されてきた資料、公開されてきた資料の読解に注力することで、学術論文の執筆や学会発表などを予定よりも早いペースで行うことができた。
まず、2023年度は引き続き狂歌研究を進める。資料の原本調査を行いつつ、学術論文を執筆・公開する予定である。また加えて、前年度の研究の中でもとりわけ契沖に関わる研究を進める予定である。具体的には、契沖自筆資料の調査を行い、これまで以上に契沖の学問の内容を詳細に検討する。主に、和歌を詠む上でどのような点が契沖に影響を与えているかを明らかにすることで、人々が和歌とどのように交渉していたか、その具体的な記述を行いたい。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)
同志社国文学
巻: 98 ページ: -
雅俗
巻: 21 ページ: 134-151
日本文学研究ジャーナル
巻: 23 ページ: 76-92