研究課題/領域番号 |
22K13079
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
奥畑 豊 日本女子大学, 文学部, 講師 (90882837)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 独裁者 / アフリカ / 英語圏文学 / ポストコロニアリズム |
研究実績の概要 |
3年間の研究計画の初年度にあたる本年度はまず、基礎的な文献の読解を中心に研究を進めた。アフリカを舞台にした代表的な独裁者小説を再読し、それらに関する先行研究を渉猟しただけでなく、このサブジャンルをより大きな(世界文学的な)枠組みの中に位置づけるために、ラテン・アメリカやそれ以外の地域の独裁者文学をも読み込んだ。 その後、この分野の研究書として優れているMagali Armillas-TiseyraのThe Dictator Novel: Writers and Politics in the Global South (2019)の提示する視座を批判的に拡張した論考を執筆し、国内での学会報告(オンライン)を経て海外の学術誌に発表した。この論文はいわばアフリカを舞台にした独裁者文学に関する研究序説というべきものであり、その執筆を通して今後の方向性がより明確になった。 また、レイモンド・ウィリアムズ研究会にて拙著『ビッグ・ブラザーの世紀:英語圏における独裁者小説の系譜学』(2019)の合評会が行われ、口頭にて報告を行った。さらに、そこでの発表内容を大きく発展させてジョージ・オーウェルとサルマン・ラシュディについての論文を執筆し、同研究会の会誌に発表した。この論文は直接的にはアフリカを扱っていないが、独裁者文学をより大きな視点で捉えつつ新たな系譜に位置づけ直したという点で、本研究の成果の一部であると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アフリカを舞台にした独裁者小説をグローバルな視点から再考することの重要性を指摘した英語の論文を出版することができたため、順調であると言える。その執筆を通して研究の枠組みの基礎を固めることができた。また、オーウェルとラシュディに関する日本語論文においてはそうした視点を実際に応用することで、有効性を確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
アフリカの独裁者を描く英語のフィクションを文学史や世界文学の枠組みの中に位置づけるという作業をさらに続けるとともに、今後は特に個々の作品についてもさらに細かく分析し、その成果を公表していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
出席予定だった学会が急遽オンラインになり、旅費の支出が必要なくなったため、代わりに書籍の購入費として支出した。残額については英語校閲、学会出席費用、書籍の購入費用の一部に充当する。
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