本研究の最終目的は、レオパルディが開発したと考えられる「自由カンツォーネ」という詩形に関して、その誕生の経緯を明らかにすることにある。初年度2022年度の三点の課題のうち③テクスト収集は、現地調査が実施できなかったため2023年度に持ち越されていた。また2023年度の当初からの課題は次の三点である。④レオパルディの詩作品の分析、データの整理、⑤詩作中断期間における文学研究活動の全体の把握、⑥第2回現地調査。以上を踏まえ、2023年度の実績を以下に示す。 前年度から持ち越された③については、2024年2月に現地調査を実施した。④に関しては、初期作品については実施できたが、後期作品についてはそれがかなわなかった。また並行して行う予定であった日記や書簡の調査も実施できていない。関連する先行研究の調査は一通り終えている。⑤についても、『カンツォニエーレ』注解の調査を開始したが、全体的な調査には手が付けられていない。⑥はそもそも⑤に続けて行われるべき現地調査なので、こちらも行っていない(2024年2月に行った現地調査は2023年2月に予定されていたものである)。 当初の予定にはなかったが、シンポジウムの趣旨に合わせて、レオパルディのカンツォーネの韻律を、詩形カンツォーネの歴史の文脈にあてはめて検討する、という研究を行った。その結果、レオパルディのカンツォーネのモデルがペトラルカにのみでなく、18世紀末に活躍した詩人モンティにもあることが発覚した。と同時に、モンティにも「自由カンツォーネ」に類似する形式を用いた詩が存在していたことが分かった。モンティとの比較を通じて、レオパルディの「自由カンツォーネ」の特徴がよりよく浮かび上がってきた。④の研究結果の一端をまとめた論考「レオパルディの初期カンツォーネの韻律」は2024年4月に刊行された。
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